第22話 テスト開始!・・・②


さて、肝心のテストについてだが、今回のテストは月、火、水、の3日かけて行われる。

そして教科については現代文、古典、数学I、化学基礎、現代社会、コミ英、英語表現の7科目。

今回は保健体育や家庭科といった技能教科のテストはないため、まだ楽な方である。


そして今日のテストはというと、現代文とコミ英という5教科の中では楽な方。

今までつくづく思っているのだが、数学が入る日には他の理系科目は重ならないというのはもはやあるあるである。

このあるあるは今回も当然当てはまっており、正直助かっている。


先生も分かっているのだ、理系科目は同じ日には混ぜるな危険であるということを……


SHRを終えた俺たちは、すぐさまテストを受けるためにシャーペンと消しゴムを取り出すと、残りの荷物は片付けて廊下に並べ始める。

俺もクラスメイトに続いて廊下に荷物を置いていると、


「ねぇねぇケンジ、どうしよう。なんか今回に限ってめちゃくちゃ緊張してきたんだけど。今までそんなことなかったのに……」


いつもと違って、びくびくしているあゆみが俺のもとに話しかけてきた。


「そりゃそうだろうよ。今回は本気で学年で十番以内目指してるんだから。緊張してるってことはそれだけお前がマジな証拠だ、自信持てよ」


そして、あゆみの姿を見た俺はテスト直前ということもあり、俺らしくないことは重々承知なのだが、真面目にそう励ましてみる。


「う、うん……ありがとう。なんか…とてもうれしいことを言ってくれてるのは分かってるんだけど、なんかケンジが言ってるとしっくりこない」

「おい」


くそ、珍しく優しいこといってあげようとすればいつもこれだ。

どうやらあゆみは俺にそんなことは望んでいないらしい。


「あっ、そういえば私のシャーペン、芯使い切ってたんだった。はやく入れとかないとっ」


そしてあゆみは急に思い出したかのようにそうつぶやくと、さっさと自分のカバンのもとに駆け寄り、中をあさり始めた。


「まったく、緊張感があるのかないのか……」


俺は小さくそうつぶやくと、教室の中に戻り、座ってテストの時間になるのを待つ。


「まぁ、せいぜい二科目だ、さっさと終わらせて明日のテスト勉強しないとな……」


俺は自分の席で小さくため息をつくと、そのあとすぐにチャイムが鳴り響き、俺たちの戦いが始まるのだった。






「―――――ん~、疲れた~」


数時間後、現在の俺とあゆみはというと、先ほどダッシュで通ってきた道をゆっくりのんびりと歩いていた。

そしてあゆみは疲れた顔をしながら、大きく背伸びをしている。


「はいはいおつかれ~、明日は数学と社会が待ってますよ~」

「うげっ!明日数学?私自信ないな~」


俺が“数学”という単語を発した瞬間、あゆみは今まで伸ばしていた体を一気にうなだれさせる。


「いいじゃね~かよ数学。覚えることほとんどねぇんだし」

「何言ってるのよ、逆に覚えるだけの方がよっぽど楽じゃない」

「逆に俺にはそれが分かんねぇんだよな~」


俺たちは互いの意見を述べながら、行きとは比べられないほどゆっくりと帰路に就いている。

まるで、行きにゆっくりできなかった分を取り返すかのように。


「あぁ~あ、これがあと二日もあるなんて…私耐えられるかなぁ?」

「何言ってんだよ、今回は中間だったからよかったけど、期末だったら家庭科とか保健体育もあるんだぞ」

「うぇ、信じらんない」


あゆみはこんなことを言っているが、今回においてはそれをやってもらわなければ困る。

できるかではない、やるのだ。


「このままの生活続けたいんだろ?だったらやるしかねぇじゃねぇか」

「それは分かってるけどさぁ……」


今はつらくとも、テストが終わり見事十番以内に入れば、自由のきく生活ができる。

これは、俺があゆみの立場だったとしてもいいポテンシャル維持につながるいい動機になるだろう。


そう、俺だってこのテストを見事乗り越えられれば……乗り越えられれば……


「ん、あれ?」

「え、どうかしたの?」


俺はそこまで考えていたところでふと立ち止まると、深く考え事を始める。

そう、逆に俺があゆみに勉強を教える動機は、あゆみにクラス内で俺の変な噂を流されないようにするため。


「お~い、ケンジ、どうしたの~?」


まぁそれ以外にメリットがあるとすれば、このままあゆみと彼氏彼女の関係が続くということくらい。


そして俺はそこまで考えが浮かんだところで、急に冷静になると、こんな一つの違和感?……不満のような思いが込み上げてきた。



あれ?俺、テストを乗り切ったとしても、ただの現状維持になるだけじゃねぇか!!


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