第21話 テスト開始!・・・①
「ホーホーホッホッホー……」
先ほどまで真っ暗であったこの部屋は、まぶしい朝日によって明るく照らされる。
今日は特別、睡眠に入ってから朝日によりおぼろげに起こされるまでの時間は非常に短く感じた。
まぁこれは俺の気持ちの問題というより、普通にただ時間が短かったからであることは言うまでもない。
「ゴソゴソ……」
まだ目を開けておらず、かすかな意識である俺は隣で物音を立てているのを聞き取る。
今まで俺は、あゆみがまだ俺を起こさないという理由から、この寝てはかすかに起きてというのを繰り返していた。
そして今あゆみが行動を起こしたということはもう起きなければならない時間。
しかしあゆみのことだ、どうせ朝の準備とか言って7時くらいに起きているのだろう。
高校は、どんだけ遅くても8時20分までに教室にいることができていればいい。
そして俺の場合、起きてから家を出る準備が終わるのが約10分、そしてここから教室に入るまで約20分。
つまり、俺は7時50分に起きることができれば十分間に合う、それまではゆっくり寝ておこう。
「ちょ、ちょっとちょっとケンジ!」
考えをまとめた俺はもう一度睡眠に入ろうとするのだが、あゆみが俺の体をさすってきたため、強制的に起こされる。
「ん?なんだよあゆみ、どうかしたのか?」
俺は眠い目をこすりながらあゆみに向かってそうつぶやくと、あゆみはぶるぶる震えながら、壁に立てかけられているアナログ時計を指さしながらこうつぶやく。
「ね、ねぇ…この時計って何分か進んでなかったっけ?」
「はぁ?何言ってんだよ、部屋に一番見やすいところにある時計だぞ、ずれているのなら直してないわけないだろう……が……」
俺はあゆみの反応と発言により、頭の中に一つの仮説が生まれてしまったことを自分自身で察する。
その仮説は、頭の中だけでも言葉にすることは非常に恐ろしいため、イメージしか浮かばせていない。
しかし、もしこの仮説が事実なら、現実から目をそらしている場合ではないため、俺は起き上がり、ゆっくりと頭を上げ時計に示された時刻を見つめる。
「ねぇ、これって進んでるよね?そうでしょ?」
あゆみはさきほどより震えながら俺を見つめるが、この事実を知った以上、俺だって震えたい。
そう、時計が示す時刻は午前八時、今すぐにでも家を出ないともはや間に合わない時間。
「お……おぉーーい!!うそだろぉーー!!」
「ねぇ、やっぱり進んでないの?この時刻で合ってるの?そうなの?」
「バカ野郎!!いい加減現実を見やがれ!!スマホ見れば分かんだろ!!そもそも考えてみたら立てかけてる時計は電波時計だ。一分一秒の遅れもねぇ!!」
俺はあゆみに一発渇を入れると、すぐさま起き上がり急いで服を着替え始める。
「ね、ねぇここで着替えないでよ!」
するとあゆみは自分の目を隠しながら悠長にこんなことを言ってくる。
「言うとる場合か!!わ、分かったよ、俺は玄関の間で着替えるから。お前はこの部屋で着替えろ。いいか?五分以内だ、それまでに家を出る準備をするんだぞ!!」
俺はあゆみにそう言い残すと、すぐさま荷物と着替えを持ってこの部屋を出る。
そして五分どころか、三分以内で着替えと準備を終わらせると、あゆみが部屋の扉を開けるのを、ただ待つ。
「早くしろよ、時間がねぇんだから……」
俺は小言をつぶやき、足をパタパタさせながら待っていると、あゆみも何とか五分以内に準備を終わらせ、部屋の扉を開ける。
「よし、準備はオッケーだな?早く出るぞ」
俺たちはすぐさま家を出て鍵を閉めると、ダッシュで階段を駆け下り、学校に向かって走り出す。
「なんだよ、寝る前さんざん起きれるとか言っておいて、結局お前も起きれてねぇじゃねぇかよ」
「ほんとごめーん、私もアラーム止めたら寝ちゃってた~」
俺たちは俺を先頭に学校まで全力で走りながら、そんなことを言い合う。
まぁ今回俺は、あゆみに頼る気満々だったため、俺に責任がないとも言えないため、ここらで言い合いはやめておく。
そして俺たちは家から学校まで非常に近いことが幸いし、十分と経たないうちに学校の正門が見えてくる。
「おっしゃ~、これなら間に合いそうだ」
「はぁ、よかった」
俺たちはすこし安堵しながら、残りの距離をダッシュで駆け抜ける。
「ガラガラ……」
そして俺たちが自分の教室の扉を開けた時、俺の腕時計は八時十九分を指していた。
「はぁはぁ、あぶねぇ…間に合った!」
俺は今のこの状況に大きな達成感を感じながら、俺たち二人はそれぞれ自分の席へと座る。
そして教室の雰囲気はというと、いつもはみんな席を立ちガヤガヤしたものなのだが、今日はテスト当日ということもあり、各々ちゃんと席に座りいつもと全然違う静かで緊張感のある雰囲気を醸し出していた。
「今日に限っては皆さん真面目だねぇ」
俺は小さくそうつぶやきながらカバンを席の隣に置くと、SHRを知らせるチャイムが鳴り響き、先生が教室へと入ってくるのだった。
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