第19話 テスト前!・・・②
「あんた何言ってるの?私たち隣同士じゃない。なんでわざわざここに泊まらなきゃいけないのよ!」
俺がそんな発言をした瞬間、あゆみはそんなことを言いながらとても分かりやすく動揺する。
「確かにお前の言いたいことはよ~く分かる。だけどこれにはちゃんと理由があるんだ!」
「はぁ、ワケ?何よそれ、ちゃんとした理由があるなら言ってみてもらおうじゃないの!」
あゆみは俺のそんな発言に対し、両手を腰に当てながらそう聞いてくる。
「正直に言おう、俺はこの時間に寝てちゃんと起きられる自信は全くない」
「は、はい?」
「だから学校に行く時間になったら起こしてもらいたいんだ!」
俺は自信満々にそう宣言する。
そう、仕方がない、もう時間は深夜4時、寝れる時間は限られている。
そして8時から学校、その上テストがあるこの状況で遅刻は絶対に許されない。
ここはひとつ、お互い協力するのが吉だろう。
だが、
「ばっかじゃないの!?なにそんな情けないこと自信満々に言っちゃってるのよ。自分でちゃんと起きなさいよ。私は帰るからね!」
あゆみは俺の提案を断り、さっさと帰る準備をし始めてしまう。
「おいおい待てよ、お前こそこんな深夜に寝てちゃんと朝起きれるのか?ここひとつ協力をだな……」
「いいえ、私はちゃんと時間に起きれるから大丈夫です~。心配は無用なんだから」
そしてあゆみは俺のこんな誘導にも乗ることはなく、何の不安もなさそうにそう答えてしまう。
あゆみには寝過ごすという考えはないらしい。
「あ~そうかよ、じゃあお前はこんな俺を放っておいて、自分一人で起きて勝手に学校に行くんだな?」
「何よ人聞きの悪い。あなただってちゃんと起きて学校に行けばいいじゃない?」
「その自信がないから言ってるんだよ~」
俺は全力であゆみに頼み込むが、あゆみは無理の一点張り。
そのため、あきらめきれない俺は別の手段をとることにする。
仕方ない、あんまり使いたくはなかったんだが……
俺は今までの態度を変え、少し下手に出ながらそうあゆみにつぶやいた。
「お、お前はそれでいいのか?お前にここまで勉強を教えてくれた恩人に、そんなことをしちゃっても、本当にいいのですか!?」
「べ、別に、いいとかじゃなくて……、ケンジがちゃんと起きればいいだけであって……」
「だから俺にはそれができないと言っている。だからあゆみは俺の部屋で寝て俺を起こすことなく、勉強を教えてくれたありがた~い恩人の俺を放っておいて一人で勝手に学校に行くというのですか!?」
そう、俺は今まであゆみに着せた恩を振りかざしながら、あゆみに再度尋ねる。
これであゆみがきっぱりと断れるのなら逆にすごいと思う。
そしてあゆみはというと、さすがに戸惑ってしまっているようで。
「そっ、そんな私を人でなしみたいに言わないでよ!……わ、分かったわよ!この部屋で寝ればいいんでしょ!寝れば!!今夜だけだからね!」
あゆみは俺のそんな発言により、仕方なさそうに、今夜だけ俺の部屋で寝ることを了承する。
成功だ、あゆみの俺に対する恩を全開で振りかざしたこの作戦。
この作戦は成功確率を上げる代わりに、俺自身の立場を一気に下げてしまう諸刃の剣。
成功しなければ、ただの自爆だったのが、うまくいってよかった。
あゆみと二人きりの部屋で寝る。
別に朝ちゃんと起こしてもらいたいという目的しかないと言えばないのだが……
でも…なんか楽しみだなぁ。
「そうと決まったら、私はさっさと学校の準備してくるから。あなたは寝る準備をしてなさい。一応聞いておくけど、布団はちゃんと二つあるんでしょうね?」
「あぁ~でも、今日は部屋に一枚しか敷いてたらいけないってテレビの占いに書いてあったような……」
「……はっ倒すわよ……」
「しっかり二枚敷かせていただきます!」
「よろしい……」
あゆみは玄関の前でそう確認を取ると、さっさと自分の部屋へと帰っていった。
そして俺はというと、よくあるラブコメみたいに布団が一つしかない~っていう状況を今回は俺自らの手でできそうだったのだが、やる前にあゆみが釘を刺してきたため、しかたなく押し入れから布団を二枚取り出し敷き始める。
そして俺はあゆみが帰ってくる前に寝間着へと着替える。
そしてあとはもう寝る時間も限られているため、俺も学校の準備を済ませ、あゆみも俺の部屋に帰ってくると、さっさと歯磨きなど寝る支度を済ませて二人布団の中へと入っていく。
「はぁ~、なんでこんなことに……」
「こんなこととは失礼だな。それにこんなことって言うのなら、もとはと言えばお前から始まるんだからな」
「まぁ、そうだけど……」
一度家に帰って寝間着に着替えてきたあゆみは、ため息をつきながらそんなことを言うと、さっさと横になる。
「さぁ、明日も早いんだから早く電気消しなさい」
「なんだよ寝ながら偉そうだな。はい、じゃあ電気消すぞ~。アラームかけたか~?」
「ちゃんと5分おきにいくつかかけたわよ」
「了解」
俺はあゆみの返事を聞くと、さっさと電気を消して俺も横になる。
「おやすみ~」
「おやすみなさい」
そして二人とも寝る体制に入り、睡眠をとり始める。
残り時間も限られているため、なるべく長く寝るべきなのだが、
「寝た?」
女子と二人きりで寝るという、おそらく陰キャ陽キャ関係なく、高校生である俺たちにとってはほとんど経験することのないであろうこの状況に、俺はテンションが上がっていた。
「修学旅行の夜じゃないのよ?さっさと寝なさい」
あゆみはそう言うが、俺としては深夜テンションになってしまっているのか、今からすぐにとはいかなさそうだ。
「なぁあゆみ」
「何よ?」
あたりを見ても真っ暗で、時間が止まったかのように感じられるこの時間。
これはいい機会だと感じた俺は、長くなるかもとは思ったものの、このままだと寝れそうにないため、あゆみに一つ聞いてみたかった事を尋ねることにした。
「なんでお前、そこまで勉強しようとするんだ?」
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