第17話 一夜を共に・・・③


「はぁ~おいしかったわ。ご馳走様」


あゆみは満足したような表情をしながら、そうつぶやく。

俺たちは手分けして茶碗を洗い終え、現在ちょっとした食休みをを取っている。

始めは、男女二人が俺の部屋で二人きりという状況に、多少の不安はあったものの、案外何とかなるようだ。

今では、俺どころかあゆみの方まで自分の部屋なんじゃないかと思うほどリラックスして、現在スマホをいじっている。


「よしっ、食休みを済んだことだし、私はこのまま帰るね~」


すると、食休みをして気持ちがひと段落着いたのか、あゆみはそう言いながら持ってきていた荷物をまとめ始める。


「おいおい、帰っちまうのかよ。夜はこれからだぞ~」


現在の時刻はもう午後十一時、この時の俺はすでに深夜テンションとなり、気分はいつもより高いため、床に寝そべりながらそんなことを言い始める。


「あなたのこれからってのはそのまま勉強が続行してしまいそうだからパスで」

「おう、よくわかったな。このまま朝まで二次方程式といきましょうや」

「やりません。さすがに今日は疲れたから。また明日ね」


あゆみは俺のそんなテンションをはねのけ、さっさと帰る支度を済ませる。


「そうかいそうかい、じゃあ俺も今日は寝るとするかな、どうせ明日も学校だし。夜道は危ないぞ、ついて行かなくて大丈夫か?」

「ただ隣の部屋に帰るだけなのに、どこが危ないのよ」

「へいへい、冗談ですよ。じゃ、また明日」

「はい、また明日~」


そしてあゆみは帰る支度を終えると、さっさと荷物を持って隣の部屋へと帰っていってしまった。


「……帰ったか……」


すると、急に静かな部屋になってしまったからなのか、やけに冷静になってしまう。


「あ~あ、こんな生活があと二週間続くのかね~、先は長そうだ」


そして俺は今日一日を振り返って、こんな生活がテストまで続くと思うと何とも言えない気持ちになってきた。


別に、今日みたいな生活が悪いわけじゃない。

だって、学校の美少女と二人で一つ屋根の下で夜まで過ごすことができるのだから。はたから見ればこんないい話はない。


「だけどなぁ……ちょっと何かが足りないんだよなぁ」


そう、二人きりと言っても別にただただ数時間隣で勉強を教えてるだけで、別におうちデートとかでも何でもない、ひたすら勉強なのだ。

普通ラブコメとかだったら勉強教えてもらってる側が途中で勉強のやる気をなくして遊びとか持ち掛けてくるものじゃないの?

正直ちょっと期待してたんですけど!ラブコメ始まってほしかったんですけど!

勉強以外もしようぜ、青春しようよ!高校生なんだから。


その上、あゆみは成績のわりになぜが勉強熱心であるため、俺も流石にそんなことを言うわけにもいかず、ただただ俺も勉強を教えているだけ。


いいんだよ、別にいいんだよ!このままいけば本当に十番以内に入れそうだし。


「なんかな~自分でも何がしたいのかよくわかんなくなってきたな~」


現在、俺の中では理性と煩悩が入り混じり合い、自分の本心という言うものが分からなくなってしまった。

俺はあゆみと遊びたいのか、勉強してほしいのかどっちなのやら。


「でも、このままあゆみに合わせて勉強を教えていくしかないよな~。高校生活もかかってるし……」


しかし、結局あゆみとの契約がある以上、従うしかないわけで…


すると当然ながら、毎日放課後になると、3時間ほど学校で勉強をし、そのまま俺の家で2時間ほど勉強を行うという日々の繰り返しとなる。


「俺だって勉強が大好きなわけじゃないんだぞ、正直高校入ったら、友達作ってめちゃくちゃ遊ぼうと思ってたのにな~」


俺は、そんな愚痴をこぼしながら部屋にあるベットに顔を埋める。


今さらながらにどうしてこんなことになったのだろうか?

まぁ結論から言えば俺の発言のせいなのは言うまでもないが、ここまで発展しますかね。


「あれっ、そういえばあゆみって一応俺の彼女なわけか……正直こんな関係が彼氏彼女の関係だなんて信じられね~な」


今となっては俺とあゆみの関係はもはや同性の友達にしか思えない。

なぜかあゆみの性格は合いそうだし、謎の安心感さえ感じられる。


「あ~あ、高校デビュー、完全に失敗したわ~」


俺は結局、いろんなもやもやを抱えながら、これからの二週間をあゆみと一緒に過ごすことになるのだった。

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