彼女契約結んでみました

第3話 断りたかっただけなのに・・・③

「だめだだめだ、俺はお前に勉強を教える義理なんてない」

「え～、なによそれ！別に教えてくれたっていいじゃん。私、どうしても中間テストで十番以内をとらなくちゃいけなくて。ねっ、お願い！」

冗談じゃない、なんで誰一人友達のいない俺がこんな性格真反対の奴となんかと関わらなきゃならんのだ。

これからは心の許し合える友達一人だけ見つけてひそひそとこの学校生活を送ろうと思っていたのに…

いくら美少女だからと言っても、友達第一号があゆみだなんて、それだけはごめんである。

「だめだ」

「そんな～、お願いだから中間までの間だけでもどうにかならないかな？」

俺としては少し断りの言葉を言うだけであきらめてくれるかと思ったが、あゆみはなぜか、そう言って決してあきらめようとしない。

なんで勉強を教えてほしいというだけで、そこまで仲良くもない俺に頼んでくるのだろうか。

もっとこう、女友達とか先輩とかいろいろあるだろうに。

まぁあゆみが俺みたいなぼっちであるならば話は別だが…

「お願いっ！」

しかしあゆみは、俺が何度断っても手を合わせながらそう言ってくる。

（ヤバい、このままだとまずいな）

あきらめの悪い彼女を見て、俺は焦る。

友達がいない、つまり女子となんかとほとんどかかわったことのない俺だ。

正直、いくらあゆみだとしても容姿端麗な彼女の頼みを、そう何度も断るのは非常に気が引けてしまっている。

このままあゆみが引かずに頼み込めば、友達が欲しい俺の欲望が俺の心を飲み込み、うっかりいいよと言ってしまいそうで怖い。

そんな彼女の魔法に抗いながら、俺はさっさとこの話を終わらせてしまおうと、彼女にとんでもない条件を突きつけることにした。

「分かった、いいよ」

「ほんと！！」

そう、それがあの言葉。

「でもお前が俺と付き合ってくれるなら……だけどな」

そんな俺の言葉は、あゆみの表情を一瞬にして変化させる。

後々になって、なんでこんな訳の分からないことを言ったのだろうと、後悔することになるのだが、この時は本当に早く話を切り上げたかったのだ。

おそらく俺もこの時は頭が回っていなかったのだろう。

幸い、この時にはすでに教室に誰もいなくなっており、俺の頭のおかしい言葉を聞いたのはあゆみだけであるため、明日になって誰かに噂されることはないだろう。

まぁ、あゆみ自身が言いふらさなければ…の話だが。

しかし、案の定この言葉はかなり効いたようで、あゆみは一瞬思考が停止したかのような表情を見せる。

「……」

そしてしばらく間、音のない状態が続くと、

「なんだ、無言か？」

俺は予想通りと思い、話を切り上げようとあゆみの返事を聞く前に口を出す。

そして、

「無言ってことは無理ってことだな。じゃあこの話は…」

この話はなしだ、そう言おうとした、その時だった。

「いいわよ…」

あゆみの方から耳を疑う言葉が先に聞こえてきた。

「へっ？」

あゆみのその言葉に、今度は逆に俺の方の思考が停止してしまい、思わず変な声を上げてしまう。

「あ、あの…あゆみさん、もう一度言ってもらってもよろしいですか？」

そして、あゆみの言葉に戸惑ってしまった俺は、思わず敬語口調になりながら確認をとる。

「だから、私がケンジの彼女になってあげてもいいって言ってるの！」

しかし、二度聞いても変わらない返事に俺は思わず、

「はああああああああああ！」

俺たち二人以外、誰もいない教室で全力の大声を出してしまうのだった。