48.だったら私が!
☆コスモside
「大量……」
「絶滅……」
コスモとユリは、メアから話を聞き、思わず互いに顔を見合わせた。
情報が多すぎて困惑しているので、コスモなりにシンプルにまとめると、こうだ。
「新しい世界の為に、遠くの惑星に住んでいる生物を大量に殺す……か」
もし本当にそれを行うのだとしたら、大変なことだ。
大変なことだが……。
「正直、協力するのもありかもしれませんね」
コスモは思わず言ってしまった。
すると、国王は困惑、メアはコスモを睨み付け、叫ぶ。
「なにを言っている! なんの罪もない大量の生物を殺すんだぞ!!
その重さが分かっているのか!! おい!!」
コスモだって別に怒らせようと思った訳ではない。
ただ、自分達が死ぬ可能性を少しでも減らそうとしているだけだ。
「よく考えてみてよ。私達にデメリットってなんも無くない?
魔王の言い方的に、下手に逆らったら、殺されるかもしれないんでしょ?
命が大事なら、なおさら従うべきだと、私は思うけどね」
「お前えええええええええええええええ!!」
メアはコスモの胸ぐらをつかもうとしたが、避ける。
「メアさん、やめてください! コスモさんも悪気はないんですよ!」
ユリが間に入り、メアの興奮を落ち着かせた。
「ユリの言う通りだよ! ただ私はこれからも、人生をエンジョイしたいだけなんだ!」
折角、剣聖の力を取り戻したのだ。
大金稼いで皆の注目を浴びて、死ぬまでユリと楽しく暮らしたい。
「お前が人生をエンジョイできても、大量絶滅に自分達が関与したって事実だけで命を絶ってしまう人がいるかもしれないんだぞ!
お前は……他人のことが大事だとは思わないのか……?」
思う。
自分に手を差し伸べてくれた人には、感謝してもしきれない。
そしてなにより、恩人でもあるユリのことは、生涯かけて守っていきたいと考えている。
「思うよ。大事だと思うよ! けど、魔王の技術力に勝てるの?
大量絶滅を計画してるんでしょ? 逆らうのはやっぱり危ないよ!」
「そ、それは……」
気まずい空気が流れる。
その空気を断ち切るのは、ユリであった。
「あの! 言いたいことがあったんですけど……いいですか?」
「ああ……なんだ?」
メアはユリに発言を許可した。
「私達の世界にもいるんです! 規格外の技術力を持った人が!
先程の戦いを思い出してみてください! あれが証拠です!」
「だが、あれだけだろ? あれだけでは……」
「あのゴツイ腕だけではありません! 空だって飛べるんです!
そして、なんと言ってもコスモさんの力の秘密です!
どうして剣聖に匹敵する力を手に入れたか分かりますか?」
「武器に細工をしたんだろ?」
「違います! メアさんのスキルを間接的に使用できるようにする装備を使ったんです!」
「は?」
コスモは慌てる。
「ちょっ! ユリ! バラすの早くない!?」
「分かってもらうしかないですよ! ちょっと借りますね!」
「え!?」
ユリはコスモの指の【スキルデザリング】を外し、自分の指にはめた。
そして、物凄い速度で闘技場を移動してみせた。
その後、それをコスモに返す。
「分かってもらえましたか?」
「し、信じられない。けど、あの動きは……」
「信じてください!」
ユリが力強い目で、メアの目を見つめている。
コスモも覚悟を決める。
ヨシムラがこちら側についてくれれば、勝てるかもしれない。
それと危険になったら、最悪ユリを連れて逃げればいいのだ。
「ユリの言っていることは本当なんだ!」
コスモはチョーカーの青いボタンを押して、メタルウイングを展開して、空を飛んでみせた。
少し飛行したら、すぐに着陸し、それを戻す。
「こんな装備を無償提供してくれるような人なんだ」
「驚いた……。一体その人は何者なんだ……?」
メアと国王は目を丸くしていた。
「ヨシムラさんって人です。国王様、聞いたことありませんか?」
「ヨシムラ……聞いたことがないな」
コスモは国王に聞くが、知らないらしい。
本当、何者なんだろうか?
「だが、本当にこのような技術力を持っているのならば、捜索して見つけるべきだ。
協力してもらう、もらわないに関わらず、野放しにしておくのは危険だと思う」
確かに国王の言う通りかもしれない。
それに、興味本位で魔王の味方になってしまったら、大変だ。
ヨシムラの性格的にもあり得そうなのが怖い。
「特徴などを教えてくれ」
「分かりました」
国王様に、ヨシムラの特徴を説明した。
ユリはヨシムラの絵を描いてくれた。
かなり上手い。
料理だけでなく、絵も上手いとは……。
「とりあえず、今の所はだな……」
国王はこれからのことを、3人に話した。
現段階で魔王の元へと行くのは危険だということで、ひとまず、ヨシムラを国中に指名手配。
見つけた者は、国からの賞金1000万円を出すというので、皆必死に探し回ることだろう。
コスモ達への指令は特になく、見つかるまでは、自由に過ごしてくれというのだ。
「帰りましょう、コスモさん! 私達の街に!」
「うん。そうだね」
これから先どうなるか、分からない。
だからこそ……。
(今の内に、決着をつけておきたい)
そう、大事な決着をつける時が来たようだ。
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