第2章エピローグ
「いらっしゃいませ!」
コスモが【剣聖】を本当の持ち主である、メアに返してから半年が経った。
今はなにをしているのか、それは……。
「あっ! もうこれだけしかないや! コスモさん、私追加でクッキー焼くので、かわってください」
「分かったよ」
今は、地元の街に戻り、店を開いている。
と言っても、家の前に机を置いて、そこで売っているだけなのだが。
大繁盛という訳では無い。
だが、コスモとユリは満足している。
あの日、コスモは【剣聖】スキルを返しに行った。
当然警戒されたが、強引に王宮へ入り込み、謝罪をした。
国王はどういう心境の変化があったのか不思議に思ったようだったが、裏がないことを確認できると、メアにコスモを触れさせた。
1分程、触れ続けると、それは終わった。
確かに、自分の中からスキルがなくなったのを、コスモは感じた。
その後は国王に、約束通り王都内に住居を提供しようかと言われたが、断った。
ユリが前言っていた通り、地元で店を開こうと考えた為だ。
ただ、最低限の金銭は受け取っておいた。
おそらくこれからは、冒険者としては働けなくなるだろう。
それに、店を開いてもすぐに商品が売れるようになるとは限らないからだ。
それにしても、こうして店番をしていると、本当にもう【剣聖】ではないのだな、とコスモは考える。
正直、コスモも全く後悔していないと言ったら嘘になる。
それに、【剣聖】を失ったことにより、精神面で新たな問題も出てきた。
(けど……今、私はとっても幸せだ)
メアが今、どこでなにをしているかは分からない。
魔王と戦っているのだろうか?
だが、メアは剣聖なのだ。
ただの店員がしてあげられることは、なにもない。
(私の人生、これからどうなるのか分からない。けど、少なくとも今はこうして幸せだ。それでいいのかもしれない。1日1日を大切に生きよう)
コスモはそう考えながら、空を見ながら、口角を上げた。
「コスモさん、クッキー焼けました! 味見お願いします!」
ユリが笑顔で、そう言った。
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