28.剣聖メア
☆メアside
これは、約1年前の話である。
「メア、お前を私達のパーティから追放する!」
「え!?」
この時のメアは、14歳。
親を幼い頃に亡くしたメアは、13歳になるまでは国から支援を受け、生活してきた。
だが、働ける年齢、すなわち13歳になれば、その支援もなくなる。
13歳になったら、自分で働いて稼がなくてはならない。
昔から剣術を学んできたメアは、冒険者になろうと考えた。
冒険者になった後は、パーティに入ることもできた。
入れてくれたパーティは、人数を増やしたいという動機で入れてくれたのだが、それでも嬉しかった。
だが、とある日のクエスト終了後、メアはパーティ追放を言い渡されたのだ。
「り、理由は? 理由を聞かせてください!」
「理由? それはお前がスキルを所持していないからだよ」
今更であった。
スキルがないことは、パーティに入る際に、メアが言ったのだが……。
「いやだって、本当にスキルがないとは思わなかったじゃん。てっきり隠しているかと思ったよ。ま、今回のBランク級のドラゴン相手にもスキルを使わない所を見ると、どうやら本当にスキルがないんだと分かったぞ」
スキルがないということは、基本的に誰にも言ってない。
言わない方がいいと言う助言も王都の神官から受けている。
前例がないということから、差別やいじめに繋がるだろう。
そう考えた神官から、その日の儀式は、はじめから無かったものとして扱って貰ったのだ。
このことは、神官が国王には報告しており、本当に無かったことになった。
だが、共に戦う仲間に対して、嘘をつくのが辛く、パーティに入る際にメンバーに打ち明けた。
その時は、冗談だと捕らえられ、信じて貰えなかったが……。
「ということで、お前は追放だ。分かってくれ、ここにいるのは全員戦闘用のスキルを所持している。いくら剣術がそこそこできても、それだけの奴を私達のパーティには入れておけない。足手まといのお荷物なんだよ! ハッハッハッハ!! ほら、金だ。これがあれば、半年は生きていけるだろう」
確かに、半年は生きていけそうな金だった。
せめてもの情けだろう。
メアはそれをしっかり、受け取る。
「じゃあな!」
そう言うと、パーティメンバー3人が、メアの前から去っていった。
「はぁ……帰ろう……」
ため息をつくメア。
だが、約1年も雇ってくれたと前向きに考えると、すぐに気持ちを切り替える。
「よし! ソロでだって、頑張ってみせるぞ!」
その後、メアは簡単な依頼を受け続けた。
難しい依頼だと、死ぬ可能性が高いからだ。
ソロは、誰も助けてくれない。
それもあり、危険度が更に増すのだ。
そして、そんな生活が1年間続いた。
幸いパーティを抜ける際に貰った金があったので、最初は良かったが、報酬金が少ない依頼だと、必然的に貧乏になっていった。
「おい! ちょっといいか!」
休日の昼間、誰かがドアをノックしてきた。
「はい。って、兵士さん!?」
「ああ、国王様がお前を呼んでいる。来てもらおうか」
一体何を言われるのか、不安になった。
だが、拒否権は無さそうだったので、そのまま兵士と共に王宮へと向かった。
「おお! よく来たね!」
「ど、どうも……」
実は会うのは初めてではない。
メアが親を亡くした際には、親身になって悲しんでくれた。
とても素晴らしい人だ。
「君に大事な話がある」
「話……?」
「うむ。実は今まで言ってなかったが……メアはスキル無しなんかじゃないんだ」
「え!?」
「黙っていてすまなかった……。しかし、確証が得られないままでは、ぬか喜びをさせてしまうと思って言えなかったんだ」
国王が全て話してくれた。
メアは知らなかったが、メアが誕生した際に、その身に宿したスキルのロックが外れてしまったらしい。
本来であればそれは有り得ないのだが、メアのスキルが余程強力だったのだろう。
このままでは、メアの身が持たない。
そもそも、一般的にスキルのアンロックが13歳から可能だというのも、体を考えてのことだ。
このままではまずいと考えた国王は、王族に伝わる禁忌の魔術を使用した。
クリスタルに封じられているタイプだったので、人間である国王でも使用できた。
その効果とは……。
対象となった人物のスキルを、別な誰かにランダムで移す。
というものだった。
別な誰かというのが、どこの誰だかは、本当に分からない。
だが、今はそれしかない。
その誰かが危険な目に合うかもしれないが、伝承には、こうあった。
本来の持ち主とは違う体にスキルが宿った場合、そのスキルの力は弱まる、と。
初のこころみだが、今はこれにかけるしかない。
国王はメアと他の誰かに申し訳ないと思いながらも、禁忌の魔術を使用した。
すると……メアの容態は回復に向かっていったというのだ。
「禁忌の魔術により、移したスキルを戻す方法は確かにあった。だが、最初にそれを言って、後でその人が死んでしまっていたということが分かったら? もしそうだとしたら、スキルがあると知りながらそれを得られない状況に、メアは耐えられないだろう……。だから言えなかった。だがな、遂に見つけたのだよ!」
「見つけた……?」
「ああ! 遠くの街に、【剣聖】を持った子を見つけた! そう! 君のスキルは【剣聖】! 勇敢なる者に、相応しいスキルだ! 君の苦労は報われたのだよ。君は無能なんかじゃない、素晴らしい才能の持ち主なんだよ!」
メアは自然と涙を流していた。
「う、うぅ……」
「だから、もう少し待ってくれ。そして、これがもう1つのお願いだ」
国王は真剣な眼差しで言った。
「将来的に、王の座を継いでくれないか? 有能で優しい、君にこそ王になって欲しいのだよ」
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