27.国王様に会いに行った

「おお! ここが王都ですか! 私、初めて来ましたよ!」

「私もだよ! なんか、色々と凄いね!」


 王都へ辿り着いたコスモとユリは、王宮へは行かず、ひとまず泊まる宿を探しながら、観光を楽しんでいた。

 長旅だったのと、これから忙しくなるだろうから、こういうことも大事だと考えたのだ。


「この果物美味しいですよ!」

「地元では見ない果物だね。私も食べよっと」


 2人は買い食いなどをして、楽しむ。

 宿に関しては、かなり高級なものもあったが、ふかふかのベッドとそれなりの設備があれば良かった為、そこそこ高いくらいの宿にした。


 そして次の日、いよいよ2人は王宮へと向かうのであった。


「なんだ、君達は?」


 王宮へ入ろうとすると、門番に問われた。


「私は、剣聖のコスモです。こっちは仲間のユリです。国王様に相談があって来ました」

「剣聖!? あの噂の!? ちょっと待っていろ。国王様に訊いて来る」


 門番の1人が、王宮の中へ入り、しばらくすると戻って来る。

 その人は息を荒らくしている、走って来たからであろう。


「今すぐ来て欲しいとのことだ!」


 何やら急いでいる様子だ。


「分かりました。行こう、ユリ」

「ちょっと待ったぁー!」


 門番が、コスモとユリの間に壁を作るように、その手でさえぎった。


「剣聖さん1人で来て欲しいとのことだ」

「私1人?」

「ああ。剣聖さんにしか話せない、重要な話でもあるんじゃないのか?」


 コスモがユリと見ると、ユリは頷いた。


「大丈夫ですよ! 緊張するかもしれませんが、頑張って来てくださいね! 私、宿で待ってますので!」


 少し残念そうだったが、国王の命令というのならば、仕方がない。


「ごめん、じゃあ、待っててね。というか、私1人か……。本当に緊張するね」


 コスモは1人、王宮の中へ入り、国王の部下に案内された。


「この部屋だ。では、私はこれで……」


 このドアの中に、国王様がいるらしい。

 コスモは緊張しながら、ドアをノックした。

 すると、「入ってくれ」と言われた為、コスモは部屋の中に入る。


「おお! よく来たね! 会いたかったよ!」


 国王の表情は明るかった。


「いやいや、まさか君の方から来てくれるとは……SRランク冒険者達に頼んだのだけれど、中々連絡がないものだからね。不安だったのだよ」


(そこまでして私を探していたんだね……やっぱり魔王を倒すには、私の力が必要になる可能性が高いのかな? 自分で言うのも何だけど、私強いし)


 今のコスモであれば、心理的にも実力的にも、魔王を倒しに出発できるレベルだろう。

 それだけ、【剣聖】によって高められた力は大きいのだ。


(というか、やっぱりミアカは使命があったんだね……というか、シロッコさんもそんなこと言って来なかったし……)


 ここでそれを言うと、ミアカとシロッコがどんな目に合うか分からないので、あえて言わないでおいた。


「ささ、座りなさい」

「はい」


 コスモは椅子に座る。

 フカフカの椅子で、中々に高そうだ。


「お菓子もあるから、食べなさい」


 目の前には大量のクッキーや、その他のお菓子が並べられていた。

 コスモは折角なので、少しだけ食べた。


「それにしても、本当に良かった。こうして君と出会えて……本当に良かった!!」


 国王は涙を流し、それをハンカチで拭いとる。

 そして、幸せそうにニコリと笑うのであった。


「え、え……?」


 コスモは困惑する。


(何も泣かなくても……)


 アオリの場合とは違い、嬉しき泣きのようだが、それでも国のトップに目の前で泣かれると、申し訳がないのであった。


「うむ! すまないね、ようやく……ようやくあの子が報われるかと考えたら、ついつい涙が出てしまったよ」

(あの子……?)


 あの子とは……?

 コスモに心当たりはなかった。

 もしや、魔王に親を殺された子でもいるのだろうか?


「私を呼んだ件って、魔王討伐に関してですよね?」

「ん?」


 国王が首を傾げた。


「まぁ、関係あると言えば関係あるが、正確には違うな」

「えっ?」


 正確には違う……?


「簡単に言うとだね。君にはある1人の子を救って欲しいのだよ……メア、入りなさい」


 国王がそう言うと、奥の扉から1人の子が出てきた。

 栗色のショートヘアのかわいい子だ。

 メアという名前らしい。


「かたき討ちってことですか?」


 国王は首を横に振る。


「この子は……救世主だ」

「救世主!?」

「うむ。だが、この子のこれまでの人生は、壮絶なものだった……。それが今、報われようとしているのだ」

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