9.不審者

 次の日、コスモとユリは、防具屋へと足を運んだ。

 コスモはそのような店に関して、全くと言っていい程に知識を持ち合わせていなかった為、ユリの案内で店へとやって来た。


「色々あるんですよ! ここ!」


 ユリがそう言う通り、様々な防具が並んでいる。

 中にはペラペラな服のようなものもある。


「ユリ、これで攻撃をガードできるの?」

「できますよ!」

「見かけによらないんだね」


 お値段の方は……500万円。


「高っ!?」


 それ程性能が良いということであろうか?

 だが、どちらにしろ、高すぎて買えない。

 安物の重そうな防具はかえって機動力を損ねる。

 コスモは頭を悩ませた。


「別に無理して買わなくてもいいんですよ? 安物買って後で後悔しても仕方がないですし」

「そうだね」


 とりあえず後日決める形でもいいかもしれない。

 それまでは薬草集めのような、簡単なクエストをしながらこれからを考えるのも悪くない。

 コツコツと経験をつむことができれば、ランクアップ。

 そうなれば、一気に大金を入手することが可能になる。


 2人はとりあえず、防具屋から出た。


「ヒヒッ! ちょっといいかな?」


 防具屋から出ると、コスモ達は呼び止められた。


「わ、私達ですか?」


 いきなり話しかけられ、コスモは思わず驚いてしまった。

 白衣に黒髪のロング、そして眼鏡をかけており、糸目である。

 そして、おそらく2mくらいの長身だ。

 年齢は、20歳くらいだろうか?


「そうだよ。君達だよ、君達! 今時間ある?」

「えーと、何の用ですか?」

「おっとっと! 怪しい者じゃないよ♪ 実は防具屋の外から……ドアの隙間から君達をずっと見ててね。防具を買えなくてカワイソーダナーって思ったから! だから! ちょっとね、協力してあげたいと思ったんだ♪」

「協力ですか」


 コスモは少し警戒した。

 なぜ、見ていたのだろうか?

 そういう疑問もあるが、それ以上に胡散臭うさんくさく感じる。

 人は見かけで判断してはいけないとは言うが、いきなりフレンドリー過ぎるのもあり、怪しさ抜群である。


「あ、あ、あ、あ、あ、あ、怪しまなくていいから!! 私こう見えても友達いないから! 決してコミュ障とかじゃなくてだね! 距離の取り方が良く分からなくて、気が付くと距離を置かれちゃってるみたいな感じだから! アッハッハッハ!!」

「えぇ……というかコミュ障って?」


 コスモも友達が少し前までいなかったが、コスモとはタイプがかなり違うようだ。

 というかなぜ、友達がいないアピールをして来たのだろうか。


「あっ、君、ぼっちオーラ? 雰囲気放ってたから、仲間意識が芽生えると思ってたんだけど……後何か自分より弱い人にマウント取りそうな雰囲気も出してるから警戒解いてくれると思ったんだけど……駄目だった? そうか、駄目かぁ」


 コスモはまだ何も言っていない。

 というか、この人、たまに良く分からないワードを使用する。


「で、協力って主に何をしてくれるんですか?」


 話が進まないと思ったコスモは、思い切って聞いてみた。


「おお! やっと心を開いてくれたんだね! 嬉しいなぁ♪ では、人気のない所へ行こうか! ウッヒッヒッヒ!」


 その人は、コスモとユリの手を引いて、裏路地へと案内した。


「ご、強引ですね。というか、力が強い」

「確かに、見かけによらず鍛えているのでしょうか?」


 力が強そうには見えない。


「ちっちっち! 違うんだなぁ♪ ちょっとした力を高めるアクセサリーを装備していてね」

「そうなんですか!?」

「うん。凄く小型だけどね♪」


 はっきり言って、戦闘には向いていないほど体の細いこの人間でさえ、強い力を発揮している。

 これは期待できるかもしれない。


「ではこちらを!」

「これは、転移クリスタル!?」


 コスモは驚いた。


「いいんですか!?」


 ユリもだ。

 それはそう、転移クリスタルは一度使用すると壊れてしまうアイテムだ。

 行き先は、作成時にあらかじめ指定しておく必要があるが、かなり高価なアイテムだ。

 そんなものをどうしてホイホイと渡せるのだろうか?


「いいのいいの! ささっ、気にせず使って!」


 と言われたので、その人に続き、2人は転移クリスタルを使用すると。


「うわっ! すごっ!」


 無事に転移することができた。


 コスモ達が見たことのないアイテムが並んでいる。

 大きさは様々だ。

 装備? 武器? 様々な物がある。


「ここは私のアトリエでね。画家とかじゃなくて、何とかのアトリエ的な? あー、君達には分かりにくいかー、まーとにかくさ、他の人は滅多に入れないんだ。けど……君達は特別さ♪」

「で、おいくらなんですか?」


 コスモは早速聞いてみる。

 おそらく、コスモ達が買えるギリギリの価格の商品を売りつけてくるのだろう。

 だったら話は早い方がいい。


「え? タダだよ?」

「「タダ!?」」


 予想外だ。


「そんなに驚かないで大丈夫だよ。ほら、タダより高い物はないっていうしさ♪」

「「え?」」

「お、驚かないでよっ! もうっ♪」


 そう言われると、不安になってしまう。


「な、なんかやっぱり怪しいですよ! 私帰ります! コスモさんも帰りましょう!」

「むむっ!? そうは行かない! このまま帰るならここで死んで貰うよん♪」

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