8.祝! 依頼達成!!
「「カンパーイ!」」
コスモはユリと一緒に、喫茶店に食事をしに来ていた。
互いに飲み物を注文し、グラス……いや、ティーカップをぶつけ、カンパイしていた。
ティーカップにはコーヒーが入っており、カンパイでそれが少しこぼれた。
行儀が悪いかもしれないが、まだ飲酒できる年齢ではないので、仕方がない。
「いやぁ、コスモさんが無事で、本当に良かったです! で……本当に大丈夫ですか?」
「またその話?」
コスモはクスリと笑いながら言った。
ここに来るまでも、何回も「体に異常はないですか!?」と心配してきたのだ。
「心配してくれるのは嬉しいけど、私は大丈夫だよ。ほら、魔剣も私の腰で大人しくしているし」
戦闘時以外、魔剣を腰に装備できるように、ホルダーを買ってきた。
無駄づかいできないので、安物である。
案外安物でもしっかりしており、落とす心配はない。
というか、落としても戻って来る。
ユリの提案により、コスモが実験済だ。
「それでも心配ですよ」
「ありがとう。心配してくれて」
半数のエルフが持つ、ゴールデンボール……。
確か、ドワーフにも所持者がいるみたいだが……。
ともかく大事なものらしく、弱点でもあるらしい。
言い返した上に、その大事なものを殴った時から、ユリがなんだか大きく見える。
この子は強い子だ。
今のコスモはユリに対し、そう感じていた。
(【剣聖】を手にしてから、強くなったと思ったけど、やっぱり私はまだまだみたいだ)
コスモは少し困ったような表情で笑った。
「私も下手すればあそこで死んでましたから、いつかコスモさんに恩返ししないとですね!」
「期待してるよ。あっ、パスタ来た!」
注文したパスタが来た。
2人共、ミートスパゲッティを注文した。
「「いただきます!」」
いただきます、の挨拶をすると2人はフォークを使い、それを食べ始める。
「私、外食ってほとんどしたことなかったんですけど、外食もいいものですね!」
ユリの家はあまりお金がないと言っていた。
つまり、「普段は家で食べてるんだ。家庭の料理も美味しいよね」とか言ってしまえば、嫌味のようになってしまう。
それに、ユリは家族との仲は良くない。
それは駄目だ。
「ユリは、料理とかするの?」
「しますよ! 今度食べます?」
「食べたい!」
「じゃあ、今度作っちゃいます! 何がいいですか?」
「じゃあ、シチューで」
「分かりました! 美味しく作れるように頑張りますね!」
ユリは、とても嬉しそうな表情をしていた。
「ユリはいい子だね」
「え!? そうですか? えへへ……えへへ……そうですかぁ!」
顔を赤らめ、照れる。
ユリは褒めると照れる。
「ユリは褒められるの、慣れてないの?」
「まぁ、そうですね。慣れてはないですね。どうしてそんなことを?」
「ユリは私が褒めると照れるから。でも大丈夫! 私も褒められ慣れてないから!」
ユリは顔をムッとさせる。
「私が照れるのは、コスモさんに褒められてるからですよ! いや確かに、他の人に褒められても嬉しいですけどぉ……それは違うといいますかぁ……」
そういえば……出会った時も顔を赤らめていた。
あの時は、コスモがうっかり勘違いさせるようなことを言ったからだ。
コスモ自身もそう思っていた。
だが、今も普通に褒めただけで物凄く顔を赤くしている。
それにこの反応……。
(そういうことなの? え? 自意識過剰じゃなくて?)
とは言っても、「私のこと好きなの?」とか気軽に聞けない。
そもそも、コスモは告白されたことも、誰かに恋愛感情をいだいたこともない。
それもあり、恋というものが分からない。
仮にユリがコスモを、恋愛的な意味で好きだとしても、どうしていいか分からない。
(黙っておこう)
とりあえず、今は現状維持だ。
告白された時は、どうすればいいのだろうか?
そんなことを考えながら、コスモはパスタを口に運ぶのであった。
そして数秒後、別な話題に移そうと試みる。
実際に大事なことで、必要なことだ。
「ユリは明日予定空いてる?」
「私は大丈夫ですけど。というか、コスモさんのお世話になるというのに、予定とか言っている場合じゃないです! もっと努力しなくてはなりません!」
「じゃあ、明日は装備を見てみない?」
「装備、ですか」
「うん。私武器はこれしか装備できないけど、服とか防具とかは必要だと思ってね」
「確かに、あった方がいいですね。コスモさんの機動力は素晴らしいですが、奇襲攻撃に備える必要もありますからね」
ユリの言う通りだ。
今回の呪いの場合もそうだろう。
装備をしっかり整えていれば、防げたかもしれない。
もっともその場合、魔剣が困ることになっただろう。
だが、問題は今ある金銭で良い物が買えるか、ということだ。
当然、性能が良い防具はそれだけ値が張る。
「とりあえず見て回ろう。実は私、装備のお店とか見て回ったことないんだよね。ユリはそういうの詳しい?」
「はい! 買えはしませんでしたが、剣術を磨いていた身です! この街のそういうお店なら詳しいですよ!」
「本当!? じゃあ、明日は早速見に行きましょう!」
「そうですね! かっこいいのにしましょう!」
「あくまでも、性能重視でね……?」
こうして、明日装備を見に行くこととなった。
良い装備が見つかればいいのだが……。
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