炎の大魔導師 VS  黒いペンギン -7-

 イワトビーたちの前にふたたび姿を現したブラックペンギンは、凶悪なブラックペギーとなり、かつての自分を死の淵に追いやったイワトビーたちに復讐している、というのが現在の状況のようです。


「待ってください。ブラックペギーが恨んでいるのは、あくまであのときの自分をいじめた、青年のイワトビーたちですよね。大人たちには世話をしてもらい、むしろ恩義があるはずです。それがどうして、イワトビー全員が復讐の対象になったのでしょうか」


「それは……」

 

 イワトビーAは溜めを作りながら、顎をさすっています。


「それは?」


「あのときの青年たちも、今は立派な大人じゃん。イワトビーは基本大人になったら、見た目の区別はつかないじゃん」


 溜めるほどの解ではありませんでした。


「理解しました。見分けがつかないから、無差別にいじめ返すしかないということですね」


「いじめかえ――。そう、じゃんな……。そういうことじゃん、ね……」


 Aはいじめ返す、という言葉に、多少なりともショックを受けている様子です。


「ブラックペギーに同情の余地があることは認めます。しかしながら、恩義があるものたちに対してまで、無差別に復讐するのは間違っています」


 きっとブラックペギーも葛藤の中、どうしようもなく、全員攻撃をするしかなくなっているのではないでしょうか。


 やさしくしてくれたイワトビーたちのことまで、傷つけたいとは思わないはずです。


 確証はありません。


 心に受けた傷が膿を持ち、恨みが育ち、凶暴性が増し、その怒りが無差別に向かっている可能性もありえます。


 うだうだ推測していても仕方ありません。


 こういうことは、本人と直接対峙するのが一番です。


「あの大きな三角のコブが前方に開けているということは、もう少し歩いたらブラックペギーのもとに着きますよね」


「鬼畜道おばさんは、なにか勘違いしてますじゃん。ブラックペギーは、さきほどから目の前にいますじゃん」


 そう進言するイワトビーBの視線の先には、下のほうが霧雪に隠れてはいますが、巨大三角コブがあります。


 そう……だから、遠近的に、この少し先に、ブラックペギーはいるのですよね?

 














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自称氷の大魔導師が児童化してしまいましたので、それなりに責任を感じています 雲のポテト @kumonoteinei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ