炎の大魔導師 VS 黒いペンギン -6-
大人のイワトビーたちがどれだけ誠心誠意を込めて、回復の手助けをしても、ブラックペンギンの表情には二度と笑顔が浮かぶことはなかった。
そしてべッドから起き上がれるようになったときには、ブラックペンギンはだれにも別れのあいさつを告げることなく、消えるようにいなくなってしまった。
と、いうことでした。
「大人たちは、いじめをした青年のイワトビーたちを叱り飛ばしたじゃん。だけど、集団を叱ったところで、たいした効果はないじゃん。主犯がだれかわからない限り、本質的な追及はできないじゃんからね。どちらにしても、ブラックペンギンはいなくなってしまったじゃん。大人たちは皆、この山にたった一羽のあの子を守ってやれなかったことを悔いて、泣いたじゃん」
まだ未熟な子供の心理というものは、確かに恐ろしいものがあります。
立場的に弱者であるがゆえに、悪事をひた隠しながら、おのれが有利な立ち位置に登ろうと思慮します。
それが集団の中で、秘密裏に行われるのですから、なかなか大人は気づけたものではありません。仮に気づけたとしても、証拠を捕まえるのは至難の業です。
ブラックペンギンという、決して泳げない最弱者を追い込むことで、それ以外のイワトビーの子たちは、それよりは自分の方が上になり、わずかな安心を得ることになります。
「ところが、あるとき。ブラックペンギンは、とんでもなく巨大な三角のコブを頭にこさえて、イワトビーたちの元に戻ってきた、そうですね」
わたしの確認に対して、イワトビーA、Bは神妙な面持ちで、ゆっくり深くうなずき、Cは「そうじゃん」と言葉少なに返事を返しました。
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