炎の大魔導師 VS 黒いペンギン -5-
「その顔を見ると、わかってくれたようじゃんね。水辺はあるんじゃん。その水辺で行われる “大人の儀式” にて、ブラックペンギンが溺れてしまったんじゃん」
「ペンギンなのに、溺れたのですか?」
「そうじゃん……」
イワトビーAは項垂れています。
「単に、成長がまだともなっていなかったから、というわけではないのですか?」
イワトビーAは、やんわりと首を横に振りました。
「いんや。どれだけ成長を待とうが、ブラックペンギンが泳げることはなかったじゃん。大きくなった翼を羽ばたいても、そのまま水中に沈んでいくじゃん。そればかりか、体もどんどん大きく重くなっていくせいで、儀式の最中に溺れても、引き上げるのも大変になっていったんじゃん」
不思議なことがあるものです。
ペンギン族は(魔物とはいえ)、水中で泳ぐことに特化した生物です。
そのため翼には鱗が密集しており、さらには水の抵抗を減らすため、空を羽ばたく鳥と比べて、翼は小さく形成されています――。
「何度、儀式をやり直しても無駄だったじゃん。イワトビーの子供たちは皆、次々と立派に泳いでみせ、儀式を通過していくのに、ブラックペンギンだけがいつまでたっても、どれだけ努力しても、泳げるようにはならないじゃん。イワトビーの子供たちは、その様子を見て、おかしそうに笑っていたじゃん。――そして、恐れていたことが起こったんじゃん」
「……」
「体ばかりが大きくなって、大人の月齢に達しても、泳げるようにならないブラックペンギンを、イワトビーの青年たちは、いじめるようになったじゃん。あるとき、ブラックペンギンは儀式でもない日に水辺に呼び出され、無理やり泳ぐようはやしたてられた末、水中に蹴落とされて、溺れてしまったんじゃん」
「……」
「さいわい、大人たちにすぐ発見され、命は助かったけど、三日三晩昏睡状態でうなされつづけたじゃん……」
イワトビーAは悲しそうな顔をしています。
Bも、Cも。
これで語尾が「じゃん」でなかったら、もっとスムーズに言葉が頭に入ってくるのですが。悩ましいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます