炎の大魔導師はそれを揉みたい -2-
メガトンファイアーでぶっ飛ばした氷山の下までたどりつくと、先ほどトビーに向かって暴言を投げたイワトビーたち三体が、凍てついた地面の上にたたきつけられ、倒れていました。ザマアありません。
「まだ息があるペン」
「仕留めそこねたようですね。それでは、もう一発」
「やめるペン! それ以上やったら、本当に死んじゃうペン!」
到底理解できませんが、トビーは倒れている三体の上に、覆いかぶさるようにその身を伏せました。
「どういうつもりですか。まさか、この者たちを助けたいとでもいうのですか」
こくん。
トビーは首を縦に振りました。
生かしていて、利点があるとは思えませんが、迫害を受けたトビー自身に、攻撃をする意思がないのであれば、これ以上第三者がしゃしゃり出られるものでもありません。
「わかりました。しかし、このまま治癒しないとなると、どちらにしても死んでしまいます」
三体ともほぼ虫の息です。わたしはただの炎の大魔導師ですから、氷の魔物を救うすべは持ち合わせていません。
「ト、トビー、おまえ、なんで戻って、きた……? こんなとこ、早く、去るんだペン。でないと、おまえまで……」
三体のうちの一体が、ゆっくりと重い瞼を開き、なにやら不吉めいたことをもらしたのち、ふたたび目を閉じてしまいました。
今のはいったい? トビーがただの脂肪に成り下がったから、故郷を追い出したというわけでもないのでしょうか? ほかになにか、理由が……?
「し、死ぬなペン! 頼むから、死なないでくれ…ペン……!」
大粒の涙をこぼして、トビーは、今目を閉じたばかりのイワトビーの胸をどんどこたたいています。
「グエ! グエッ! やめ、やめるペン。マジで…死んじまうペン……。グエ!」
このまま、マジで死なせてしまったほうが、スッキリするかもしれませんが、先ほどの発言の真意を聞き出さねばなりません。
「トビー、トビー、そこは脂肪に守られていて拳が通りません。もっとここ、鳩尾を狙うのです」
「ここペンか?」
ドコオ!
「おまえら、マジでそのへんにしとけよ、ゴゥラア!」
虫の息だったはずの一体が、勢いよく上体を起こしました。語尾に「ペン」を忘れるほど、元気に生還したようです。
「そう、そこです。よくやりました。この調子で、残り二体の鳩尾も殴ります」
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