氷の大魔導師にお漏らし疑惑が生じたので、炎の大魔導師がお世話をする -5-

 ロビーもまた、しんと静まり返っている。


 そして誰もいない。


 ここなら話しても、問題になりません。


「それにしても、いったいどうしたわけでしょう。こんなにずぶ濡れになるなんて」


「ぼくにもわからないんだよ。突然体中から水が溢れ出して、ぽたぽた雫がたれて止まらないんだ。それになんだか寒い」


 フレデリック君はブルブルと震えている。


「ひとまず、全部服を脱いでください」


「えっ、えっ!? 全部!?」


「はい。このままでは風邪をひきます。原因になっているものはすべて、払いのけるべきです」


「ちょっと、待ってよ! いやだ! 絶対いやだ!」


「わがままを言ってはいけません。えい」


 フレデリック君の服を引っ張る。


 フレデリック君は抵抗していますが、五歳の力ではかないませんよ。


「わー! いい加減にしてよ! やめて!」


「そうペン! やめるペン! 嫌がってるのを無理やりしたらいじめだペン! 許さないペン!」


 ペン……。


 さっきからペンペンいっているのは、誰でしょうか。


 フレデリック君の足元にたまっている水たまりが、一箇所に集まりだした。みるみるとある形を形成していき、出来上がったのは氷属性の魔物だった。


「そうぺん! いい加減にするペン! フレデリックをいじめるのは、このイワトビーが許さないペン!」


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