氷の大魔導師にお漏らし疑惑が生じたので、炎の大魔導師がお世話をする -4-

 遠くからカラスの声が聞こえてきますね。


 そういえば、今何時ですか。


 ずいぶん長く、読みふけっていたような気もしますし、あっという間だったような感覚もあります。


 そうです、フレデリック君。あれから何の連絡もありませんが、まだ館内の探索を続けているのでしょうか。


 興味のある本を見つけて、楽しんでいてくれたらいいのですが――。




 ギャーー---!


 今の悲鳴は、フレデリック君?


 ただごとではなさそうです。


 パンフレットを開いて、フレデリック君を検索し、エンター。


 わたしの体は一瞬で、フレデリック君の元に移動した。


「ミリアおばさん、ぼく、ぼく、どうしよう。お漏らししたわけじゃないんだよ」


 フレデリック君の体は全身水浸し。


「こ、これは、どうしたんですか。トイレに行きたかったのなら、行ったら良かったじゃあ……。五歳とはいえ、トイレくらい行け――」


「ミリアおばさん、笑いすぎだよ。お漏らしじゃないよ。その証拠にほら、スボンだけじゃなくて、上着もびしょびしょなんだから」


 確かに、フレデリック君が濡れているのは全身です。


 服など、しぼれるくらい水をたっぷりと含んでいます。


「そうですね。そのままでは、風邪をひ――……ふっ」


「だからそんなに笑わないでってば!」


 お漏らししたかどうかが問題ではなく、お漏らししたかもしれないと疑われて、足を内股にしながら、身体をぎゅっとしぼめているのがおかしくて、かわいい。


 こらえきれずにいると、突然鬼の形相のスタッフが、瞬間移動してきた。


「ちょっと、あなたたち、うるさいですよ! 他の利用者たちに迷惑です! キャー! それに何ですか、その恰好は! 水浸しじゃないですか! キャー!」


 うるさいのはあの方のような気もしますが。


「わかりました。ロビーに移ります。フレデリック君、こっちですよ」


 フレデリック君の手を取ると、パンフレットにロビーと入力して、エンター。


 瞬時にわたしたちは、ロビーに移動した。


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