氷の大魔導師にお漏らし疑惑が生じたので、炎の大魔導師がお世話をする -1-
バスから降りると、目の前がハクハク大図書館です。
特殊な技術で建てられた広大な建造物。
世界中において、ここに置いていない書物はないといわれています。
「ここがハクハク大図書館かあ。かっこいいね!」
「かっこいい。どこかですか」
「大きくて、カクカクしているところが!」
「それが理由ですか。言葉は誤解がないように、もう少し正確に表現したほうがいいですよ」
「ミリアおばさんは、ときどきうるさいよ」
フレデリック君はふくれっ面になってしまいましたが、注意すべきところはした方が本人のためです。
「ミリアおばさんは、来たことあるの?」
「何度もあります。それからおばさんではなく、お姉さんです」
頻繁に来れるよう、比較的近くに居を構えているくらいですからね。
「フレデリック君も、来たことはありますか」
「わからない。大人だったときのことは、覚えてないからね」
やはり、口を割りませんね。
「……」
「ミリアおばさん、どうしたの? さっきから何度も、後ろを振り返っているけど」
「なんでもありません。ゲートはここです。入りましょう」
鞄からマイナンバリングカードを出して、タッチパネルにかざした。
「ピッて鳴るのもかっこいいね。秘密組織の入り口みたいで」
「ちがいます。税金を納めている世界中のまっとうな人たちなら、誰でも利用できる図書館です」
「わかってるよ、気分壊れる……」
フレデリック君は五歳なので、通過するのに証明書は必要としません。
なんとなく、何者かにつけられているような気もしますが、あやしいものはハクハク大図書館には入れませんので、どちらにしてもここで撒けるはずです。
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