氷の大魔導師にお漏らし疑惑が生じたので、炎の大魔導師がお世話をする -2-
館内は静まり返っている。
世界中から集まったさまざまな人が、目当ての本を探したり、じっくりと読みふけっています。
「スタッフの人っていないんだね」
「いますよ。必要なときに現れます」
「必要なときって、どんなとき?」
「……」
「ミリアおばさん? ねえ?」
「……」
「ミリア」
「……」
「駄目だ。本に気を取られて、ぼくの声が聞こえないみたいだ」
久しぶりに来ましたが、ハクハク大図書館の迫力と雰囲気は、他の図書館とは比べものになりませんね。
古代の書物から今日発売されたものまで、ここに揃わない書物はありません。
足元から十メートル上の天井まで、本棚にぎっしり本が詰まっています。
その大きさは東プロドームの五十個分とも百個分とも言われていますが、本の冊数に合わせて、建物も自在に拡大しているというのですから、そのサイズは明確には測れません。
「ミリアおばさん、この中からどうやって、目当てのレシピを探すの? 数が多すぎるよね」
フレデリック君に袖を引っ張られて、はっとする。
「ゲートをくぐったところに置いてあったパンフレットを取ってきました」
二つのうち一つをフレデリック君に渡す。
「これはパンフレット兼検索機です。ジャンルごとの本の置き場を確認したり、直接ここに入力して、目当ての本を探すこともできます。行きたい場所が決まったら、エンターボタンを押すと、そこに瞬間移動できます」
「へえ、すごいね」
「これだけ広いと、歩いて目的の場所までたどり着くのは、非常に骨が折れますからね。どのような方でも、簡単に目当ての場所にたどり着けるよう、サービスは行き届いています。このパンフレットは、微力の魔道で作られているみたいですね」
「お年寄りから子供にまで、やさしい図書館なんだね」
「そうですね。さて……」
ああ、駄目です。うずうずが止まりません。
「わたしが行きたい棚は決まっています。フレデリック君はどうしますか。何か読みたい本があったら、別行動を取ってもいいですよ。このパンフレットは通信の役割も果たしますので、連絡はいつでも取れます。どうしますか」
「ぼくもミリアおばさんと一緒にいくよ」
「わたしは古代の魔道レシピばかりある棚に行きたいのです。古代文字、五歳のフレデリック君は読めないですよね。何時間かかるかわかりません。退屈ですよ」
「そっか。それならせっかく来たんだし、ぼく、館内を探索してみようかな」
「それがいいと思います。見聞を広めるのはいいことです」
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