炎の大魔導師と氷の大魔導師は大図書館を目指す -14-
「元気でね~、無理したら駄目よ~、また必ず来てね~!」
「よかったらまたお越しください。今度はお代をいただきますよ」
おかみさんとご主人に見送られて、わたしたちはリンリンシチーを後にしました。
タダ宿ほど、尊いものはありません。お子さま様様です。
少々、フレデリック君は、愛という重みを全身に味わうことになってしまいましたが……。
「後悔はないですか、フレデリック君。おかみさんはもう、見えなくなりましたよ」
「くどいよ、ミリアおばさん」
「ミリアおばさんではなく、お姉さんです」
あれからいくつか問い詰めてみましたが、フレデリック君は大人だった頃の記憶があるのかどうか答えてくれません。
「では、予定通りハクハク大図書館に向かいます」
「どうやって行くの? もしかしてまた歩くの?」
「いいえ、シャドウ・バスに乗ります」
「バス!? お金あるの!?」
「ダンジョンでのことですが、あのときモルダリンマンの口の中に、ゴールドモンスターが顔を覗かせていたことに気づいていましたか」
「モルダリンマンの口の中!? そんなところにゴールドモンスターがいたの!?」
モルダリンマンが口を開けて、ゲロ球を吐き出すとき。喉の奥の方に、ほんのわずか3cmほどの金色に輝くトカゲのような魔物が顔をのぞかせていたのを、わたしは見逃しませんでした。
召喚したあのおじさんがモルダリンマンを倒したとき、一緒にゴールドモンスターも倒され、その拍子にこぼれた金塊は、すかさずすべてポケットに押し込みました。
そういうわけで今現在、財布の中はガッポガッポです。
どうやらおじさんだけでなく、フレデリック君も気づいていなかったようです。
「やっぱり、ミリアおばさんはすごいや! こけてもタダじゃ起きないね」
「おばさんじゃなく、お姉さんです。それに、わたしはそもそも脱出の羽を用意していたのです。誰のせいであのようなピンチに見舞われたと思って――。まあ、いいでしょう。シャドウ・バス乗り場までは歩きますよ。がんばってください」
フレデリック君は上級魔物にも怯まず、わたしを助けに駆けつけてくれたのです。
記憶があることを隠していそうな彼が、今どういうつもりで隣にいるいるのかわかりませんが、ハクハク大図書館まで行き、元に戻る方法を見つけたいというのであれば、それまでは行動を共にすることにしましょう。
「うん! 大丈夫! バス停までミリアおばさんと一緒に歩く!」
「ミリアおばさんではなく、ミリアお姉さんです」
まあ、バス停に着くまで何回このやり取りを続けるのか、数えてみるのも楽しいかもしれません。
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