炎の大魔導師と氷の大魔導師は大図書館を目指す -13-

「お前、そんなに来る客来る客困らせてはいけないよ。子供が来るたびに、目を光らせて、うちの子にならないかって誘って。いい加減にしなさい」


 宿の裏口から、髪は白いがフサフサのご主人がロビーに現れた。


 なんだ、旦那さんがいたのですか。


 てっきり独り身だとばかり思っていました。


「だってあなた~、わたし、どうしても子供が欲しいんだもの~」


「だからといって見境がないぞ。その子のことは諦めなさい」


「あなた~」


 おかみさんはまた泣き出してしまった。


 どうやら、フレデリック君に限らず、子供なら誰でもいいようです。


「もう、行ってしまうの~、さみしいわ~」


「いいえ、お約束通りもう一泊しますので、よろしくお願いします」


「え~っ?」


「何か問題ありますか」


「いいえ~、そうではないけど~」


「今朝取り決めた条件のまま、お願いします」


 ふふと、おかみさんはやさしく微笑んだ。


「もちろんよ~、うれしいわ~、もうしばらく、一緒にいられるわね~!」


 わたしの背中の後ろでまだ、たじたじとしているフレデリック君をおかみさんの前に差し出すと、おかみさんはとってもうれしそうにフレデリック君を抱きしめた。


「今朝の条件って何のことだい! さては、お前、また!」


 なごやかなロビーの風景。ご主人だけが慌てふためいていた。


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