炎の大魔導師と氷の大魔導師は大図書館を目指す -12-

 宿屋に戻るなり、おかみさんはフレデリック君を抱きしめた。


「こら~、どこに行ってたのよ~! もう~、心配させたらダメでしょう~!」


 おかみさんは泣いている。


「ごめんね、泣かないで、ごめんね! どうしよう、おかみさん泣き止んでくれないよ」


「よっぽどフレデリック君のことを心配していたんでしょうね」


「お願いよ~、もうどこにも行かないで~、おばさんと一緒に暮らそう~!」


「おかみさんはそういってますが、どうしますか」


「どうしますかって、それ、どういうこと?」


「このまま、ここでおかみさんの子供として暮らすという選択肢もあります」


 おかみさんはどうやら、本気でフレレリック君のことをかわいがっているようです。ハクハク大図書館に行って、確実にフレデリック君を元の姿に戻せるレシピが見つかるとは限りません。そもそも、あの古代の大魔導師ピルピルのレシピよりも、優れているレシピがあるとも思えない。


 改めて子供からやり直し、というのも悪くないかもしれません。


「それ、本気でいってるの」


 フレデリック君はにらむような目つきで、わたしのことを見ている。


「本気です。ここにいれば、フレデリック君の生活は安泰です。何も困ることはありません。真剣に考えてみるのもありだと思います。大人だった頃の記憶はないのでしょう。だったら、元に戻りたいという気持ちも、特にないのではありませんか。そうではなく、記憶もあって、本気で大人に戻りたいというのであれば、話は別ですが」


 見間違いでなければ、フレデリック君はグッと眉間にしわを寄せた。


「それはそうかもしれないけど……。ぼくは、ぼくは、ここでおかみさんの子供になることなんてできないよ。ごめんね、おかみさん!」


 フレデリック君はそう言ってごまかすと、わたしの背中に回って、おかみさんから隠れるような格好をとった。

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