炎の大魔導師と氷の大魔導師は大図書館を目指す -9-

「ゲッ、ゲッーーーーーー!」


 モルダリンマンが口を大きく開けたかと思うと、突然ゲロ球を吐き飛ばしてきました。


 ベチャッ!


 ゲロ球は足元に落ちると、周囲の土をドロドロに溶かしています。


「この話はいったん置いておきます。今は戦闘に集中すべきです」


「わかってるよ! だからぼくに任せてって言ったでしょ、ミリアおばさんは下がってて! モウストブリザード!」


 強烈な氷のくさびが放たれましたが、当然の結果においてモルダリンマンは無傷です。


「ゲロゲロゲロゲロー!」


「わっ! わっ! わっ! わっ!」


 連投ゲロ球をフレデリック君は器用に横跳びで避けていますが、あまり運動神経がいい方では なさそうです。まあ、魔導師とはそういうものです。


「まさか、まったく魔法が効かないことを忘れたのですか……」


「えっ、あっ!? やっ、忘れてないよ!」


 忘れていたようです。


「ひとつ、伝えたいことがあります。わたしはこれを使って、戦わずして逃走を図ろうとしていたのですが、あたなが来たことによって、打つ手が絶たれました」


 指でつまんだ羽をかざして見せます。


「そ、それは、脱出の羽!」


「そうです。これは効率よくダンジョンを攻略するため、前もって魔道で作っておいたアイテムです。しかし、これは一人用です。いってる意味、わかりますね」


 フレデリック君はまぬけづらをして首を傾げています。


「ええと、つまりは、こいつを倒すしか助かる方法はなくなった、ってこと?」


「はい。その通りです」  


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