炎の大魔導師と氷の大魔導師は大図書館を目指す -4-
「実はわたしには子供がいなくてねえ~、欲しかったんだけど、できなかったのよ~。フレデリック君はとてもかわいくて~、もうちょっとだけでもいてもらえたらうれしいなって、思ったのよね~」
理解しました。そのような理由で、昨夜からフレデリック君に対してだけ、過剰なサービスを振りまいていた、ということですね。
「そういうことでしたら、もう一泊くらいしてもかまわないのですが、あまりお金はないのです」
おかみさんは途端に、ぱーっと顔が明るくなった。
「まあ~、気にしなくていいのよ~、代金はいらないのよ~。あの子にいてもらえるだけで、わたしは嬉しいんだから~」
ふむ。いい按配かもしれません。
「そういうことでしたら、お言葉に甘えて、もう一泊だけお世話になります」
「うれしいわ~。もしよかったら、お客様お一人だけで、どこかに出かけてらっしゃってはいかがですか~? たまにはお一人で羽を伸ばすのも、いいものですよ~。そのあいだは、わたしがあの子のこと、見ててあげますよ~」
「それはありがたいお話ですか、ご迷惑になりませんか」
「いいに決まってるじゃないの~。あの子と一緒にいられるだから~」
当のフレデリック君は、シチューをぐびぐびと飲み干している。
「聞いていましたか、おかみさんはあのように言っていますが、あなたをここに置いて、わたしだけで少し出かけてきてもいいですか」
「いいよ! ぼく、ここで待ってる! おかみさん、シチューおかわり!」
「あらあら~、たくさん食べてね~」
おかみさんは変わらずニコニコしている。
「では、わたしは朝食を取ったら、一日出かけてきます。おかみさん、フレデリック君をよろしくお願いします」
「もちろんよ~、遅くなってもいいですからね~」
おかみさんは、フレデリック君の皿に、たっぷりのシチューを注いでいた。
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