炎の大魔導師と氷の大魔導師は大図書館を目指す -2-
子供の足は、やはりひ弱でした。
途中、何度も休憩をはさみながら、隣町リンリンシチーに到着したのは、夜も更けた頃。
そして見つけたのは、お手頃価格そうなおんぼろ宿屋です。
「こんなボロい宿屋にするの? いやだな」
フレデリック君は留め具が一部外れかけた看板や、雑草の生えっぱなしの周辺を見回しながら不満そうにしています。
「わたしはお金持ちではありません。宿屋に泊まれるだけ、ありがたいと思ってください」
「え! ミリアおばさんて貧乏だったの!」
「どちらかと言えばそうですね。魔道の研究ばかりしていて、労働はあまりしていません」
以前は、国王に頼まれたつまらない魔道研究をしていて、給金をもらっていた時期もありましたが、途中でどうしても他に興味のある研究が出てきてしまい、そちらにばかりに時間を費やしていたら、給金はストップしてしまいました。
今はそのときに溜めた貯金を使いながら生活をしてるので、余裕はありません。
「おばさん、もしかしてニート?」
「お姉さんです」
宿のドアを開けると、出迎えてくれたおかみさんも、どこかくたびれた格好をしています。
「あら、いらっしゃいませ~、旅の方ですか〜?」
「はい。今夜一晩泊めていただけますか。大人一人、子供一人です」
「あらあら、まあまあ〜。お母さんでいらっしゃいますか〜。お子さんとの旅、いいですね~」
ま、まままま、まさか、このおかみさんも、わたしのこと、子供がいるような歳に見えているのでしょうか。わ、わたしはまだ、そんな、歳では……。
「ううん。親子じゃないの。こう見えて、ぼくは氷の大魔導師だし、ミリアおばさんとはライバル同士なんだよ!」
なんだかうれしそうにフレデリック君が割って入りましたが、余計に話がややこしくなる気がします。
「まあ、そうなの~、ライバルなの~、いいわね~、かわいいわね~」
おかみさんはフレデリック君の前にしゃがみこむと、うれしそうに微笑んでいます。
「うん! そうなの! いいでしょ!」
フレデリック君も、へへへと笑っています。
「おかみさん、それで、泊めていただけるのですか」
「あらあ~、もちろんよ~。古い宿だけど、くつろいでいってね~。ぼくも、ゆっくり休むのよ~。たくさん寝ないと、大きくなれないからね~」
おかみさんはわたしたちを部屋に案内した後も、名残惜しそうに何度も振り返っていました。厳密にいうと、わたしのことはどうでもいいらしく、フレデリック君のことだけを見つめていました。
「やった~! これでゆっくり寝れるね~!よかったあ~」
部屋に入るなり、フレデリック君はベッドに飛び乗っています。
「おかみさんの話し方が移っていますね」
「あ! ほんとだあ~、おかみさん、とってもやさしかったからあ~」
やさしいというより、異常にフレデリック君を気にいっているようでした。
「ミリアおばさん、ぼく、もう限界。眠いや~、 おやすみ~」
「おばさんではなくて、お姉さんです」
スースー。
間に合いませんでした。
フレデリック野郎はもう眠ってしまいました。
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