炎の大魔導師 VS 氷の大魔導師 -6-

 いったん、落ち着きましょう。


「ぼく、クッキー食べますか」


「わーい! クッキー食べたい! ありがとう、おばさん!」


「……いいのです。たくさん食べてください」


 おばさん、と呼ばれるのは慣れませんが、それもいったん、置いておきましょうか。


「あなた、お名前は」


「名前は、えーとね、フレデリックって言います!」


 自分が誰かは、認識しているみたいですね。


「フレデリック君は何歳ですか」


 うーん、と考える素振りをして、


「五歳!」


 と、どうやら五歳らしいフレデリック君は答えた。


「わたしのことは知っていますか」


「知らない」


 五歳のフレデリック君は、わたしのことを知らないと。ふむ。


「フレデリック君、あなたはわたしに魔道の勝負を挑んできたんですよ」


「えー!? ぼくが!? そんなことあるわけないよ! だってぼく、魔道なんて扱ったことないもん!」


「試しに、モアブリザードって唱えてもらえませんか」


 フレデリック君は困ったような顔をしながら、


「うん、わかった。試しにいってみるね。モアブリザード!」


 フレデリック君の指先は、わたしの肩先を指さしていたので、髪の毛がつららのように凍ってしまった。


「フレデリック君。魔法は人に向かって唱えたらいけません」


「わー! ぼく、魔法が使える! わーい! やったー!」


 興奮したように喜びの声を上げると、注意した矢先だというのに、


「モアブリザード! モアブリザード!」


 フレデリック君は氷魔法を連発した。

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