炎の大魔導師 VS 氷の大魔導師 -5-

 ようやく完成しました。


 まる十日と三日間。よく眠り、よく食べながら、よく魔道研究もしました。


 誕生したばかりの「魔力の素」は、やわらかい金色の光を放っている。


 これをフレデリックに移せば、魔力は甦るでしょう。


 古代の魔術書に書かれていたレシピだから、若干不安は残りますが、その書物を残したのが大魔導師ピルピルなのだから、問題はないはずです。


 さっそくフレデリックを家に呼び寄せ、魔力の素を見せた。


「さ、さすがだな。まさか、本当に魔力の素を作り出してみせるとは」


「これくらいわたしの手にかかれば当然です。心の準備はいいですか」


「ああ、いつでもいいよ」


 両掌の中で輝きを放っている金色の光を、そっとフレデリックに近づけると、光は自ら動き、滑るようにフレデリックの中に取り込まれていった。


「これでまた魔法を使えるはずです。なんでもいいので、なにか唱えてくださ――?」


 全身、金色の光に包まれたフレデリックは、みるみる、みるみる、縮んでいき、やがて五、六歳くらいの男の子になると、着ていた服の一部が、大き過ぎてパサリと床に落ちた。


 ……これは、失敗した、ということでしょうか。 


 フレデリックが、子供になってしまいました。


 男の子はぶかぶかになった袖を揺らしながら、


「おばさん、だれ?」と首を傾げた。


 おばさん? ああ、おばさん? どうやら、わたしのことらしいです。


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