炎の大魔導師 VS 氷の大魔導師 -4-
……まさか、そんなことが?
「は、早く、たす、け……」
フレデリックが炎の中でもがいています。
今は、じっくり思案している状況ではありません。
これを使うしかないようです。
フレデリックに渡されたティア鉱石を、炎の中に投げ込みました。
わたしに炎を鎮火する魔法は扱えませんし、キッチンから水を汲んできて、かけているようでは間に合いません。
ティア鉱石にはマイナス148度となる氷の結晶が閉じ込められています。これを投下すれば、モアファイアくらいたちまち鎮火するでしょう。
予想通り、ティア鉱石は氷の結晶を無数に弾け飛ばしながら、炎を一瞬にして霧散させました。さすがの威力です。
「だから人の話は最後まで聞き給え! わたしはイワトビーの氷属性をさらに上回る氷魔法を用いて無事倒し、ティア鉱石を手に入れはしたが、その代わりに魔力を使いすぎて、枯渇させてしまったんだ! わたしはもう 魔導師ではなくなってしまったのだよ!」
焼かれてチリチリになった服や髪をはらいながら、フレデリックが大袈裟に喚いていますが、そんなことよりも玄関のドアが気になってしまいます。
むやみな氷魔法が放たれないせいで、ドアが無事なのなら、むしろこの世は平和です。
以前破壊されたドアは、トンカン金槌を打ちつけて、自力で修繕したのですから、そう何度も壊されてはたまったものではありません。
「魔力を失ったと。それは、失礼しました」
「そういうわけでだね、ミリア殿。魔法合戦は残念だが中止だ。なんだか一人で勝手に盛り上がってしまって、悪かったね……。うん? そういえば今の凄まじいばかりの氷の結晶は……? いったいどうやって炎を鎮火させたのかね!? ミリア殿、まさか、ティア鉱石を投げつけたのか!?」
魔法合戦。実に陳腐な言い回しです。
「ええ、そうですが、問題ありません。早くしなければ、フレデリックとやらは黒焦げ、いえ、消し炭になっていたかもしれません」
「貴殿は、なんてことをしてくれたんだ! もう、わたしが取ってきてあげることはできないのだぞ!」
「だから問題ありません。わたしがその気になれば、イワトビーの一羽や二羽、いくらでも倒せますので」
「で、でもミリア殿が! 簡単には手に入らないとっ……!」
「通常の人では手に入らない、ということです。わたしは通常の人ではありません。自分でティア鉱石を入手できます。ただ、あなたの横暴に腹が立ったので、けしかけたまでです」
「な、なんだって……! そんなふざけた理由で、わたしは魔力までなくしてしまったというのか! くっ!」
ふう。しかし、さすがにこのままでは、夢見が悪いというものです。
「……フレデリックとやら。あなたがいうとおり、わたしは炎の大魔導師です。魔道においては、できないことなどありません。あなたの魔力を取り戻す方法を見つけてあげましょう」
「え? 本当に? しかし、まずはその前に、フレデリックとやらって、その呼び方、やめてくれないかね?」
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