炎の大魔導師 VS 氷の大魔導師 -4-

 え? まさか、そんなことが。 


「は、早く、たす、け……」


 仕方ありません。


 手の中のティア鉱石を、炎の中に投げ込んだ。


 わたしに氷魔法は扱えない。水を汲んできて、かけているようでは間に合わない。


 ティア鉱石には、マイナス148度になる氷の結晶が閉じ込められている。これを投げ込めば火は鎮火する。


 目論見通り、ティア鉱石は氷の結晶を無数に弾け飛ばしながら、炎を霧散させていった。


「だから人の話は最後まで聞き給え! わたしはイワトビーの氷属性をさらに上回る氷魔法を用いて倒し、ティア鉱石を手に入れはしたが、その代わりに魔力を使いすぎて、枯渇させてしまったんだ! わたしはもう魔導師ではなくなってしまったのだ!」


 だから、今日はドアをぶちこわさなかったのですね。


 結局あれは、自力でトンカン金槌を打ちつけて、修繕したのですから、そう何度も壊されてはたまったものじゃありません。


「そうだったのですね。それは、失礼いたしました」


「そういうわけで、ミリア殿。魔法合戦は残念だが中止だ。なんか、一人で勝手に盛り上がってしまって、申し訳なかったね。ん? そういえば、今の氷って……、もしかして、ティア鉱石を投げつけて鎮火させたのか!?」


「ええ、そうです。それしか方法はありませんでした。早くしなければ、フレデリックとやらは黒焦げ、いえ、消し炭になっていたかもしれません」


「君は、なんてことをしてくれたんだ! もう、わたしが取ってきてあげることはできないのだぞ!」


「問題ありません。わたしがその気になれば、イワトビーの一匹や二匹、いくらでも倒せますので」


「で、でもミリア殿が! 簡単には手に入らないとっ……!」


「通常の人では手に入らない、ということです。わたしは通常の人ではありません。あなたの横暴に腹が立ったので、けしかけたまでです」


「な、なんだって……! そんなことで、わたしは魔力までなくしたというのか! くっ!」


 ふう、しかしこれでは、さすがに夢見が悪いというものです。 


「……フレデリックとやら。あなたがいうとおり、わたしは大魔導師です。あなたの魔力を取り戻す方法を、見つけてあげてもいいですよ」


「え? 本当に? しかし、まずはその前に、フレデリックとやらって、その呼び方、やめてくれないかね?」




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