第三章 悪魔の猟犬群 其の二、
第三章 悪魔の猟犬群
其の二、
ウィリアムはライトの窮地を救おうとした事をきっかけに〈第二の目〉を使えるようになり霊媒として成長したが、生活そのものは何も変わらなかった。
——人様の役に立ちたいとは思うけど、この力をどうやって使うべきか。
〝霊媒の王者〟と言われるダニエル・ダングラス・ホームのようになりたいと思いはしても、何をどうすればいいのか判らなかった。
メアリーの交霊会の助手としてミュージック・ホールに出演した事はあったが、あれは食い繋ぐ為にしただけの事、ライトのように舞台の上に立つ気はなかった。
いくら考えても、今はまだ将来の夢は具体的にはならない。
いつものように幻灯館の受付でもぎりをしていると、目の前の通りに上等な装飾が施された箱馬車が停まった。
ウィリアムは一目見ただけで、箱馬車から降りてきた立派な身なりをした壮年の男が何者なのか判った。
貴族である事は中年の執事らしき男を受付に並ばせている事からも間違いなかったが、第一に眼球が黒ずんでいる——〈邪視を持つ者〉、だ。
——あの貴族、人間か動物を殺害して、〈残留思念〉を利用しているんだ。
とは言え、いくら〈邪視を持つ者〉でも、全員が全員、先日の『常若の国亭』の連中のように、突然、襲いかかって来るとは限らない。
「いらっしゃいませ」
ウィリアムはこちらから先に仕掛けるのは藪蛇かも知れないと考えて、いつも通り対応する事にした。
「二枚、頼む」
執事の眼球は普通の人間のそれと変わらなかったが、死んだ魚のような目をしていた。
「毎度、ありがとうございます」
ウィリアムは何でもないような顔をしてチケットを売ったが、執事は香水の匂いもきつくいい印象はなかった。
彼らは他のお客に混じって幻灯館の中に足を踏み入れた——ウィリアムは受付内にある職員専用通路から地下室に下り、待機していたライトに報告をした。
「今日は他のお客様もいるし、向こうから何かして来ない限り、いつも通り幽霊ショーを行いましょう。ありがとう、心配しないでね」
ライトはウィリアムにお礼を言った。
「俺も〈第二の目〉が使えるようになったから何かあれば力になるよ」
ウィリアムはライトが幽霊ショーを行っている間、地下室の片隅に佇んでずっと警戒していた。
やがて幽霊ショーが終了し、観客が帰る中、案の定、貴族と執事だけが残った。
「——Ms.ライト、初めてお目にかかります。私の名はジーヴス、こちらにいらっしゃるメストル家の当主、チャールズ・メストル様に仕える執事です。ご主人様が、貴方のショーは、大変、素晴らしいと申しております」
ジーヴスは死んだ魚のような目をして、賛辞の言葉を並べた。
「ありがとうございます」
ライトは一礼した。
「人々の話によれば貴方は本物の霊媒だと聞いています。その力を使って、特別ショーを開いていると」
ウィリアムは『ほら、来た』と思った。
「特別ショー?」
ライトは相手の出方を窺っているのか、鸚鵡返しに言った。
「実はうちの主人は人手を集めてまして、霊媒であるMs.ライトに、折り入ってお願いがあるのですよ」
貴族が直接、人手を探すなど、珍しい事である。
「私にできる事と言えば興行ぐらいなものですが、メストル卿は何か興行を企画しているのですか?」
ライトは愛想笑いを浮かべた。
「ご主人様が企画なさっているのは『狩り』です」
ライトはジーヴスに告げられ、戸惑ったような顔になる。
貴族が言う『狩り』は、普通、『狐狩り』を指す。
『狐狩り』には主催者の奥方やご婦人方も馬車で見学者として参加するが、メストル卿が幻灯館にやって来たのは、自分を狩りに招待する為なのだろうか?
或いは狩りの余興として幽霊ショーを開いて欲しいとか?
「狩りって言うと、やっぱり『狐狩り』で——!?」
ウィリアムは軽い気持ちで会話に入ったが、ジーヴスが脇のホルスターから、ウェブリーの中折れ式回転式拳銃を引き抜き銃口を向けてきたので、それ以上、口にする事はできなかった。
「大人が真面目な話をしている時は、子どもは静かに聞いているか、黙って子ども部屋に帰るんだよ?」
ジーヴスはウィリアムの眉間に銃口を定め、それこそ子どもに向かって諭すように言った。
「メストル卿、うちの者が失礼を致しました。どうか銃をお納め下さい」
ライトはすぐさま謝罪の意を示し、深々と頭を下げた。
ウィリアムは自分が蚊帳の外に置かれている事をこれ以上ないぐらい味わっていた。
異変を察知したのか、ヘアリー・ジャックが足音一つさせずに姿を現した。
「狩りは狩りでもただの狩りではない——『悪霊狩り』だよ」
メストルが初めて口を開き、まるでそれが合図だったように、ジーヴスは拳銃を納め、脇に下がった。
「こう見えても私も霊媒でね、恥ずかしながら我が領地の森には悪霊が巣食っていて何かと悪さをしているんだよ。当然、私は領主として、悪霊を退治しなければならないが、さすがに一人では手に余る」
メストルは簡単に事情を説明した。
「メストル卿の領地に悪霊が? 悪さというと、具体的にどんな事をするのですか?」
「私の領地に『帰らずの森』と呼ばれる深い森があるんだが、名前の通り年に何人か行方不明者が出る。霊媒の私には判るんだよ、それが悪霊の仕業だとね」
「どんな悪霊の仕業かご存知なのですか?」
「代々、私の家は狩りが好きで、私自身も、長年、色々な動物を狩ってきた。おそらく、悪霊の正体は今日まで狩りで命を落とした動物達だろう。一度死んでも、再び狩りの対象となる為に出てくるとは、全く、楽しませてくれるよ」
メストルは自分や祖先の行いが祟りの原因だと考えているにも関わらず、今度は悪霊となった動物を相手にまた狩りができる事が楽しくて仕方ないようだった。
「この辺りの霊媒では君が一番の腕利きだと聞いているし、狩りには人手が必要だ。やってくれるな?」
メストルは有無を言わせぬ口調だった。
ウィリアムはもう口出しするつもりはなかったが、眉を顰めた。
どう考えても、このメストルという男、何か企んでいる。
絶対に、罠だ。
ライトもきっと断るだろうが、断ったらメストルの態度は豹変するかも知れない。
いざという時、〈第二の目〉を使って『クー・シー』に変身できるように、想像力を膨らませていた。
だが、
「ええ、喜んで」
ライトはメストルの依頼を、あっさりと引き受けた。
「私からも一人、推薦したい人物がいるのですがよろしいですか?」
その上、悪霊退治に相応しい人物をもう一人、紹介するという。
「Ms.ライト?」
ウィリアムはライトの意外な反応に、驚きの色を隠せなかった。
ライトなら腕利きの霊媒が知り合いにいてもおかしくはないが、〈邪視を持つ者〉の依頼をこんなに簡単に引き受けてもいいのか?
彼女は、いったい、何を考えているのか?
「彼です——ウィリアム・フィールディング」
ライトは当たり前のようにウィリアムの事を推薦した。
「え!?」
驚いたのはウィリアムである。
「私は先日、霊媒の暴漢に襲われたところを、彼に助けてもらいました。まだ子どもかも知れませんが、きっと頼りになると思いますよ」
ライトは自信に満ちた顔をして言ったが、ウィリアムは青天の霹靂だった。
——俺が頼りになる、だって?
「君がそこまで言うのなら構わんよ。後日、使いの者を出そう。遠出の準備をしておいてくれ」
メストルはしかし、ウィリアムに対しては一度として視線を向けようとはしなかった。
「Ms.ライト! あんな奴らの依頼を引き受けるんですか!?」
ウィリアムはメストル達が去った後、ライトに詰め寄った。
「確かに、これは何かの罠でしょうね。でも、彼がどんな悪事を働いているのかは懐に飛び込んでみない事には判らないわ」
ライトは冷静な顔をして言った。
〈邪視を持つ者〉なら何か悪事を働いているに違いないし、必ず、犠牲者が、迷惑を被っている人間がいるはずである。
「それにフィールディング君の夢を叶える為には、いい経験になるんじゃないかと思って」
「——俺の夢? 俺の夢っていうのは?」
ウィリアムには思い当たる節がなかった。
「フィールディング君は霊媒として人様の役に立つお仕事をしたいんでしょう? だとしたら心霊現象絡みの事件を解決していくうちに、きっとやりたい事も具体的になっていくんじゃないかしら?」
ライトは日頃からウィリアムの将来について我が事のように考えていたから、今回、メストルの依頼を受ける事が、きっと彼の将来を具体的なものにする、いい機会になるのではないかと思ったのである。
「そう言われれば、そうかも知れないですけど……」
「ね、そうでしょう——それに悪霊退治なら人様の役に立とうっていう貴方の初仕事にはまさに打って付けの依頼じゃないかしら。もちろん私も同行するから、いい経験だと思ってやってみたら?」
「……判りました」
ウィリアムは満更でもなさそうな顔をして返事をした。
ライトは後日、ウィリアムとヘアリー・ジャックを連れて、中部地方は田園地帯にある、メストルの屋敷に出発した。
貴族が一年十二ヶ月のうち、実に八ヶ月を過ごすカントリー・ハウスは、単なるお金持ちの邸宅ではなく、支配者が住む権力の館である。
初めて貴族の屋敷を訪れたウィリアムはそれを肌で感じ、まず屋敷の広さに圧倒された——大広間、広間、階段、回廊、書斎、撞球室、応接間、食堂、寝室、子ども部屋、厨房、浴室、洗濯室、厠、カントリー・ハウスの部屋は無数にあったが、部屋の種類は、大きく分けて、階上と階下がある。
階上は主人の領域であり、地階や半地下といった階下の部屋は使用人の領域である。
主人と使用人は通路も分けられ、使用人は屋敷を移動する際、表の通路や階段は使わず、壁の内側に設けられた人の目に触れない通路や狭い裏の階段を使う。
階下の部屋には、台所、洗い場、ジャムやパイを作るスティル・ルーム、グラス、カトラリー、金属器などを収容するパントリー、象牙やナイフを収納するナイフ・ルーム、肉類を処理し、卵にチーズ、バターなどを収容するラーダ、洗濯室、ワインの貯蔵庫、それに、使用人達の食堂がある。
ウィリアム達の宿泊の為に用意された部屋も、使用人達と同じ階下の部屋である。
敷地にはよく手入れが行き届いた庭園、四季折々の美しさを見せる森、池、小川があったが、ウィリアム達は『悪霊狩り』の開始は一週間後だという事で、階下に与えられた小部屋で一日中過ごし、暇を持て余していた。
「Ms.ライト、貴族の暮らしって本当にすごいんだね」
ウィリアムはライト達の部屋にお邪魔して、感嘆の声を漏らした。
「ウィル、ここに来て何日経つ? 初めて貴族の屋敷を訪れて驚くのは判るが鍛錬は怠るなよ」
ヘアリー・ジャックは相変わらずだった。
「『悪霊狩り』は一週間後だっていうし、鍛錬って言っても何をどうやって?」
「おいおい、俺達は『悪霊狩り』だけをしに来た訳じゃないぞ? メストルが何者なのか、どんな悪事を働いているのか、調べるんだよ。お前さんは、五体満足、五感も使えるし、頭を使えば、色々とできる事が見つかるだろう?」
「そうね、毎日鍛錬を積み重ねていれば自分の人生も豊かになるというものよ」
「って言われても、何をすればいいのか」
一日中、部屋に閉じこもっているしかない今の状況では、いったい、何をすればいいのやら?
「ご覧の通り俺は小型犬だからどこにでも出入りする事ができるし、館長も『子ども部屋のボギー』がある。ウィルだって〈第二の目〉を使って『クー・シー』になれるんだ、偵察ってやつだよ!」
「偵察?」
「まずは屋敷の構造、内部事情、それからメストル卿の生活態度、色々あるだろうよ」
「とりあえずメストル卿の生活態度に変わったところはないように思えるけど」
「確かに使用人の教育は厳しいようでも、労働環境は悪くなさそうだし、今のところ、どこにでもある貴族の屋敷に見えるな」
ライトとヘアリー・ジャックの偵察によれば、メストルは毎朝八時頃に起床し、ベッドの上で新聞を読む。
九時半、朝の衣装に着替えて、庭園を散歩し、十時に屋敷に戻って朝食を摂る。
十一時、今後の予定や屋敷のあれこれについて使用人と打ち合わせをする。
十三時、また着替えて昼食を摂り、十四時頃から、書斎で書き物や読書をして過ごす。
十五時、散歩着に着替え、庭園を散歩し、十七時にこれまた服を着替えてお茶を飲む。
十八時には正装し、夜会へ行き、夜中に帰宅して、就寝という具合である。
「メストル夫人も貴族の奥方らしくパーティの準備で大忙しみたいだな」
「何かめでたい事でもあったの?」
「『狐狩り』の前日は『出猟祝い』と称して大判振る舞いをするのが習わしだ。
ヘアリー・ジャックが説明したように晩餐会は女主人が開催し、豪華な夕食とお喋りを楽しむ親睦会である。
主催者も、参加者も、交流を通じて人脈を広げ、社会的地位の向上を狙う絶好の機会だった。
女主人は、招待客の名簿の作成、招待状の発送、夕食の献立の確認、宿泊用の部屋の点検、衣装選び、当日の席の組み合わせ、食事の合間にどんな遊びをするかなどなど、全てを取り仕切り、場合によっては特別列車を仕立てる事もある。
「でも、一つだけ気になる事があるのよねえ——このお屋敷、静かすぎるわ」
言われてみれば、その通りだった。
階下はあたかも地下墓地のように、しんと静まり返っていた。
屋敷には使用人が数十人はいるし、部屋の掃除、料理、洗濯、ベッド・メーキング、ありとあらゆる雑事を仕事としている。
だが、彼らは仕事をしている時はもちろん、階下にいる時も、お喋り一つしないらしい。
「それだけメストルの教育が行き届いているって事?」
「あの男、いやに階級を意識しているみたいだしな。明日の夜はここもいくらか騒しくなるだろうさ、俺達も細やかな『出猟祝い』をさせてもらうとしよう」
ヘアリー・ジャックは、明日、晩餐会が行われた後、おこぼれがもらえる事を期待していた。
——当日、ウィリアム達が利用する階下の食堂に、ジーヴスら使用人の手によって、晩餐会の残りが簡素な木製のテーブルに並べられた。
「皆さん、準備が整いましたので、『出猟祝い』のパーティをお楽しみ下さい」
ジーヴスは執事らしく食堂の片隅に佇み、ウィリアム達に好きな席に座るように勧めた。
テーブルに並んでいるのは、普段食べている冷肉や野菜料理、パンとチーズだけでなく、『出猟祝い』の前菜や、温かい骨付きのロースト肉、ワインに、デザートまで付いていた。
「Ms.ライト、この人達……」
ウィリアムは豪華な料理よりも、食堂に四人の男女が姿を現した事に、驚きの色を隠せなかった。
「悪霊退治を依頼されたのは私達だけじゃなかったみたいね」
「何日か待たされていたのは全員の到着を待っていたのもあったのかな」
ウィリアムは先に席についていた霊媒の中に、思いがけず知り合いの顔を見つけた。
「メアリーじゃないか!? 君もこの仕事を頼まれたのか?」
ウィリアムが見つけたのは、交霊会でお世話になったメアリーだった。
「あら、まさかこんなところで貴方と再会するなんてね! ご機嫌よう」
メアリーは相変わらず余裕綽々といった風だった。
「メアリーは最近何をしているんだ?」
ウィリアムは彼女の向かいに座り、ライトはウィリアムの隣の席につき、メアリーの連れらしき正面の黒髪の少女に笑顔を向けた。
ライトの左隣には黒尽くめの中年男性が座っていて、彼の前には紳士然とした三十代ぐらいの男性が座していた。
「お蔭様で貴方がいなくなってからも、交霊会は続けているわよ。新しい助手もすぐに見つけたしね」
メアリーの上昇思考は健在のようで、ウィリアムがいなくなってからも逞しくやっていたのだろうが、こんな仕事までしているとは手広くやっているようである。
「新しい助手? 初めまして」
ウィリアムはメアリーの隣に座っている、大人しそうな黒髪の少女を見やる。
「こちらこそ初めまして、私、ルーシーって言います」
「この子もあのパブで働いているのよ。貴方がいなくなってからすぐパブに来たの。ちょっとは霊能力があるみたいだし、お金に困っていたみたいだから、交霊会の手伝いに誘ってみたんだけど、そしたら、なんと、男の助手より女の方が受けがよかったのよ、今じゃ人気はうなぎ登りって訳!」
「私が聞いた話によればMs.メアリーの交霊会はインチキがバレて大騒ぎになったそうだが、勘違いだったかな?」
ウィリアム達の話に入って来たのは、ルーシーの隣に座る紳士然とした、三十代ぐらいの男性だった。
「貴方は?」
ウィリアムはメアリーに冷水を浴びせた紳士に苦笑いを浮かべて聞いた。
「ジェニングスだ。見たところ、君達もメストル卿に『悪霊狩り』を依頼されたご同業かな、よろしく」
ジェニングスは、にっこりと愛想笑いをした。
「何よ、貴方もエセ紳士として有名でしょうよ」
メアリーは苦虫を噛み潰したような顔である。
「おやおや、そりゃ何かの間違いじゃないかな。例えば私の目の前に座っているこの間詐欺で捕まったばかりの彼と勘違いしているとか? なあ〝黒い魔術師〟、ジェイムズ・キャロル?」
ジェニングスは目の前、ライトの隣に座っている黒尽くめの中年に向かって言った。
「ジェイムズ・キャロル? ランベス・ストリートの占い師?」
メアリーが驚いたように言った。
「そう、自分の将来を占って欲しいとやって来た女に、君の未来は薔薇色だ、素敵な男性と恋に落ち、二人はめでたく結婚、子宝にも恵まれて末長く幸せに暮らす事になる! とかなんとか言って、毎度、三ペンス頂戴していたが、つい最近、詐欺で捕まった占い師さ」
「旦那だって似たようなものじゃないですか。そりゃあこの中じゃヘマを踏んでいないのは旦那だけだが、お互い知らない仲じゃないんだ。今回は自分を売り込むまたとないチャンスなんだし、気に入られた者勝ち、邪魔はなしだぜ」
どうやら、全員インチキ霊媒として名を馳せた者らしく、一癖も二癖もありそうだった。
いや、メストル卿もとんでもない人選をしたものである。
霊媒のメアリー・シャワーズと、その助手、ルーシー・ロケット。
社交界で交霊会を催し人気を博しているという霊媒ジェニングス。
占い師であり〝黒い魔術師〟の異名を持つジェイムズ・キャロル。
——依頼人のメストル卿も含めてみんな何を企んでいるのか判らないけど、依頼された『悪霊狩り』の仕事はちゃんとやろう。
ウィリアムはライトの勧めを真に受け、今回の依頼に対してやる気満々だった。
例え何かの罠だったとしても、初めて霊媒として人様の役に立つ仕事ができるかも知れないのである。
〈邪視を持つ者〉から賃金を受け取るかどうかは別として、悪霊退治の仕事自体はいい経験になるはずだ。
「皆さん、『出猟祝い』は楽しんで頂けましたか?」
ジーヴスが頃合いを見計らい、参加者全員に声をかけた。
「明日の『悪霊狩り』は、予定通り朝から行います。現地の『帰らずの森』に着いたら三手に分かれてもらいますが、配置はこちらで決めさせて頂きます。今夜はゆっくりお休み下さい」
ジーヴスが明日の予定を説明し、『出猟祝い』は閉会、ウィリアム達は言われるがまま部屋に戻った。
『Ms.ライトの幻灯館《マジック・ランタン・ミュージアム》—霊媒の水晶宮—』 ワカレノハジメ @R50401
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