ずっと… 〜湊が好きだった(前編)

「えり、後ろ向いて…?」

湊はベットで、えりの耳元に囁いた。

「うん…」

うつ伏せになったえりの背中を舐める。

「背中きれいだね…」

「やだ…。恥ずかしい」

「…可愛い…」


湊はえりの後ろからゆっくり指を入れて動かした。

「ね…、俺のどこが好き?」

「んっ…。全部…」

「具体的に」

「一緒にいて楽しい…。んっ…」

「あとは?」

「優しい…」

「ふーん。こんな事しちゃうのに?」

湊は指の動きを激しくした。

「やだ…。話すの無理」

「どこが好き?」

「もうっ…。後で…。今はしたい…」

「やだ」

「もう…。そういうとこ」

「え?」

「好き」

「ん?」

「意地悪な所」

「好きな所が?」

「うん…」

「変態」

湊は、自分で欠点だと思ってた所を好きと言われて、少し嬉しくなった。

「じゃ、もっと意地悪する」


湊の指の本数が増え、えりの音はますます大きくなった。

「あぁっ!…」

「…入れたい…」

「入れて…。ねぇ、…」

「何…?」

「…今日安全日」

「え?」

「つけないでしてみたい」

「…大丈夫?」

「うん…。そのまま入ってきて…」

「ホント?」

「うん」

湊は、心配になりながらも、そのまま入れた。

えりの中の感覚が、直に伝わる。

「えり…。やばい…。気持ちいい」

「うん…、私も…」

湊は試すように少しずつ動く。

「あぁ…、エロ…」

「湊…、今日、中に出して…」

「いいの?」

「うん、大丈夫…」

湊の動きが激しくなった。

「あっ…、湊…。好き…」

「俺も。愛してる」

湊は欲望のまま動く。

「だめだ、イク…」




「…。えり…、大丈夫だった?」

湊は、えりを優しく抱きしめながら、頭を撫でる。

「うん、嬉しい…」

「嬉しい?」

「湊の全部、初めてもらったから…」

「…変態」

「嫌い?」


「俺が、嫌いになんてならないって分かってるくせに聞くなよ…」

湊は、痛いくらい強く抱きしめた。

「湊…」

「何?」

「好き…」

「うん、俺も好きだよ」

湊はえりにキスをする。

「湊…」 

「何だよ」

名前ばっかり連呼するから、湊は笑ってしまった。

「愛してる」

「うん」



「…えりは、このままの俺を好きだって言ってくれる」

「ん?うん」

「俺の顔、あんまり褒めない」

「そう?かっこいいよ?」

「違う。褒めない所がいいの」

「え、褒めちった…」

「あははっ。えりがいると、楽」

「んー、微妙な…」

「こんなにも、自分を出せる人に会えるなんて思わなかった」

「私も」

2人は見つめ合ってキスをした。


「えり…。俺、」

「ん?」

「えりが、パブロ君と別れた事、ホントはずっと。嬉しかった」

「……」

「やっと…、えりが俺の事、見てくれるんじゃないかって…」

湊はえりと目を合わせないようにした。

「そっか…」

「うん…。何で、別れたの?」

「言えない」

「知りたい」

「…ごめん」

「何で?忘れられないから?」

「忘れはしない」

「そ」

「感謝しかない」

「そ」

湊は明らかに不機嫌だった。


「感謝ってね、大きすぎると…、不自由なんだよ」

「俺には感謝してないもんね」

「してるよ」

「俺なんて、所詮パブロ君がいないから、付き合ったにすぎないもんね」

「違うよ」

えりは、湊を力いっぱい抱きしめた。

「湊より好きな人なんていない」

「……」

「湊…」

「…ごめん。いいんだ。別に。実際、側にいれるのは俺だし…」

「…。パブロに感謝しかないとね、今、いなくなった後でも、パブロが嫌がること言えなくなるの…」

「もう、いいよ。ごめんって…」

「でもね、たぶん、それで私が幸せが減るなら、言ってもいいって言う気がする」

「もう、いい!」

「パブロがいても…。…湊のこと…。好きになってたと思う」

えりは、言った事で、罪悪感で涙が溢れた。

「うそ、言わなくて、いい…」

湊はえりの涙に困惑していた。

「湊、私の事ずっと何も言わず支えてくれて」

「そうだよ。脈なしだったから」

「湊が、常識人じゃなかったら、私…、たぶん気がついた思う…」

「どういうこと…?」

「遠恋中、湊といるのが、本当に楽しくて」「…」

「今、思えば…」

「思えば…?」

「ずっと好きだったよ」

「…嘘だ」


えりは涙を拭いた。

「あの時、自分はパブロ以外の人を好きになんてならないって、強く思ってたから、気が付かなかったけど…」

「気がついていたら、俺を選んでたって?なわけないじゃん。俺が一番わかってるよ」

「だから、常識人じゃなかったら、だよ」「は?じゃ、なんだよ。犯せばよかったの?」

「そう…、だね」

「何言ってんの?」

「付き合う前に、湊に押し倒された時あったでしょ?」

「…ごめん。…ってもう蒸し返すなよ…」

湊は気まずそうに言った。

「あの時、実は、急に心の奥の方から、異常かってくらい、湊の気持ちがグワーって溢れ出てきてて」

「ん?」

「この気持ちって、ずっとね、厳重に鍵がかかってたんだと思う。ちょっとでも、湊が、スキかもみたいに思ったら、奥に押し込めて鍵かけて…、みたいな作業をずっとしてたんだと思う。じゃなきゃ、あんなに自分でも混乱するほど、一気に溢れ出ないと思う」

「思う、思うって、想像だろ、」

「確信だよ。だから…、湊がもし…」

「犯したら俺のものになってたって?ふざけんなよ…」

「うん、ごめん」

「そんなことしたら、俺が俺じゃいられなくなる」

「うん、やな事言った。ごめん」

変な沈黙が、流れた。


「…俺…。…えりの一番になれたかもしれないの?」

「鍵が壊れたら。そうだった」

「そう…」

「でも、あの頃それに気がついたら…。苦しかったと思う。すごく」

「うん」

「湊が守ってくれたんだよ。結果的に」

「うん。俺は苦しかったけど」

「そうだよね、ごめん」

「えりの苦しむ姿、見ないで良かった…」

「…湊のすることが…。何故か…。最善で…」

「嘘つけ」

「ホント」

「……」

「湊、ずっと好きだった」

えりは、湊をまっすぐ見て、言った。

湊の目に、涙が滲んでいた。

「嘘だ…」

「湊、一緒にいてくれてありがとう」

えりは、湊をギュッと、抱きしめる。

「ずっと、大好きだったよ」

「やめてよ…」

「やめない。湊に、自分はパブロの次だなんて、思われたら、私、一生後悔するから」「後悔してろよ…」

「ひどっ」

「そんな話、黙ってろよ…」

「聞きたくなかった?ごめん」

「ごめん…、違くて…。俺の想像がひっくり返りすぎて…」

「そうだよね…」


「えり…。えりは俺の中でずっと1番だった」

「彼女いたけどね…」

「あー…。うん…」

「ごめん、嘘」

「空気読めよ」

湊は睨んだ。

「ごめん」

「で、だからすごく苦しかった」

「……」

「だから、責任っとって」

「はい?」

「責任」

「え?」

「自分ばっかり、最善の道通ってきて…ズルいと思わないの?」

「…まさか、そんな返しを、されるとは…」「えり、好きって言って」

「好きだよ。大好き」

「愛してるは?」

「フッ。愛してる」

えりは湊が可愛くて笑ってしまった。


「えり…。俺のどこが好き?」

「あれ?話戻った?」

「どこ?」

「ほぼ全部」

「どこ?」

「意地悪なくせに優しいところ」

「そっか。わかった」

「ん?」

「意地悪する」

そう言うと、湊は、えりに覆いかぶさってキスをした。

「湊、一番大好きだよ…」

「はいはい、わかった」

「わかった途端、態度でかいな…」

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