学園祭(3) 彼女できても全然続かないよね?

とある居酒屋。

「俺らの研究室だけの打ち上げじゃないの…?」

どうやら居酒屋を貸し切って、何個かの研究室合同で打ち上げをすることになったらしい。

「皆!お疲れ様〜!湊とえりちゃんもありがとう!乾杯!」

健が、音頭をとった。

「乾杯」


ワチャワチャと打ち上げが始まった。

湊が、彼女を連れてきたとあって、違う研究室からも人が来て、えりを見に来た。

「湊の彼女だって…」

「へー…」

遠くで噂をしている女子もいた。

「もう、いちいち見に来なくていいよ」

湊は、呆れたように笑った。

とある女子が近づいてきてた。

「湊、お疲れ様」

湊のコップにビールを注ぐ。

「ん?あぁ…」

湊の歯切れの悪い返事に、えりは気がついた。

元カノかもしれない。

瞬時に思った。

湊は、えりと付き合う前、えりを好きと言う気持ちから逃避するために、色んな子と付き合っていた。


「彼女さん?」

「あぁ、そう。彼女」

「こんにちは」

えりに話かけてきた。

(ここで、わざわざ私に声かけるって、なかなかのメンタルだな…)

「こんにちは。すいません、部外者が、打ち上げに参加しちゃって…」

「ううん」

「香菜!いいんだよ!湊の彼女、午後からずっと俺等のカフェ。手伝ってくれたから!」

少し遠くから、健がフォローした。

「そうなんですか?ありがとうございます」

「いいえ。湊と同じ研究室の方ですか?」

えりが香菜と話始めた事に、湊は気が気じゃなかった。

「ううん、違うんだけど、仲良くさせてもらってて」

「そうなんですね」

「湊の彼女さん気になっちゃって見に来ちゃいました」

香菜は、しっかりメイクではあるが、元の顔もかわいいだろうなとえりは思った。

「何か。すいません。一般的な感じで…」

「えりは、可愛いよ」

湊は、はっきり言った。

「フー」

「ラブラブー」

冷やかしの声が沢山した。

「すごいお似合いです。じゃ、お邪魔しました」

(ふ~)

湊は、きもを冷やした。

えりとは元カノが原因で、ケンカになったことがあるからだ。


「湊ー!こっち来てー!」

「何ー?!」

「お前、会計係だろ!仕事、しろよ〜」

何人かの男子が集まっていた。

「あ…」

「湊、行っていいよ?」

「ごめん。なるべく早く戻ってくる」

「うん」


湊がいないと、寄って来る人も少なくポツンとしてしまった。

「えりちゃん、大丈夫?」

健が声ををかけてきてくれた。

他にも2人くらい、連れてえりの近くに座った。

「うん、大丈夫。ありがとう」

「うん。あ、こっちが晶で、こっちが佐奈」

「こんにちは」

「今日ありがとうね。すごい助かっちゃった」

佐奈は、いい人なんだろうなってすぐに思えるような子だった。

えりが、湊の彼女でも、そうじゃなくても、同じように接してくれるんだろうなとえりは思った。

「お役に立てたならよかった。佐奈さん」

「佐奈でいいよー」

「佐奈ちゃん」

「うーん、ま、いっか」

佐奈は酔っていた。

「ごめんね。この人すごい飲んじゃって」

晶が話しかけてきた。

「俺、晶くん」

「晶くん。健くんと、自己紹介が似てる」

「あぁ、合コンで使ってるのバレたわ」

「あははっ」

えりは楽しそうに笑った。

「へー、ホント可愛いね」

「な?」

「いやいや、湊の相手としては、役不足で…」

健と晶は顔を見合わせた。

「いや、十分だと思うけど?」

「ね」

「いやいや。でも、ありがとう」

えりは、美人という部類にしっかり入っているのに、本気で、自分を可愛いと思っていない所に、健も晶も好感を持った。

「何か、可愛いねー」

「ハハッ。もう、お世辞はいいよ」

「湊、ちゃんと優しい?」

佐奈は聞いた。

「うん、優しいかな」

湊の本性をここで、バラす訳にはいかないので、曖昧な返事になってしまった。

「えりちゃん、いい子そうだから。心配だよ〜」

佐奈はだいぶ酔っている。

「大丈夫だよ?大事にされてる」

「わぉ!」

「そう?」

「うん、心配してくれて、ありがとう」

えりは、ホントに嬉しかった。


湊は、えりの事が気がかりだったが、会計の仕事をしていた。

「これが、店の収益で、こっちが経費。この、打ち上げ代が…。えっと、いくらだ?湊」

湊は、こういうのが、得意なので、周りから頼りにされていた。

「そもそも、最初から違う」

湊は、笑った。

そこに女子達が何人か入ってきた。

「収支合った?」

「今、湊に見てもらってる」

「湊くんいるからって、翔、適当にやってない?」

「じゃ、環奈わかるの?」

「わかんない」

「はいはい、ちょっと静かにして」

湊が片手を上げた。

電卓を打つ。

「あー…、うわっ。すごい儲かったね…」

「やっぱ?今年やばいよな」

「湊が作ったパンケーキもクレープもめちゃくちゃ美味かったもん」

「ね!私も食べた」

「食ってね~で働けよ…。俺、彼女といる時間減らして働いてたんだからな…」

「ごめん、湊」

「いいけど」

「いいんかいっ。優しいな〜。モテるはずだよ〜」

「彼女、心配しないの?」

「…さぁ?」

「お前、モテるけどさ。彼女できても全然続かないもんな」

翔が笑った。

「えりは、違う」

湊ははっきり言った。

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