学園祭(4) もういいよ…。心が離れていく2人

「よし!これでOKじゃね?」

湊は、会計の仕事を終えた。

「さすが湊!サンキュー」

「じゃ、飲もう?」

環奈が、お酒を持ってきた。

「俺、彼女の所もどるから」

「ちょっとだけ付き合ってよー」

マコが入ってきた。

「お、マコ。お疲れ。疲れたな」

「ね。でも、湊、あんなに料理上手だって知らなかった」

「あー、最近、はまってて。って、さっきも言ったよね?」

湊は、笑った。(だいぶ酔ってんな)

「美味しかったなぁ」

「だから、食ってないで、働けよ」

「また、食べたーい」

「もう、やんない。疲れた」

「あはは」

酔っているので、いつもより距離が近い。

マコは、湊の腕を、バンバン叩いていた。

湊は、えりの方をみた。

えりは、健と佐奈と晶と飲んでいた。

湊の心は安心と嫉妬がマジっていた。

「湊、コレ」

「何?」

「残った材料で、クッキー作った」

マコは、酔っているので、そのクッキーを湊の口に持っていく。

「ちょっと。マコ酔いすぎ。自分で食べるから…」

マコはしつこく、口元に、やるのでしょうがなく食べた。

えりの方を見たら、目があった。

(やべっ!)

「ごめん、やっぱり彼女のとこ行く!」

「コラッ。逃げるな」

マコは湊の腕を、引っ張った。

「そうだぞ、湊。彼女は、健いれば大丈夫っしょ。飲もう」

「いや!」

「ほら!」

翔に、無理やりコップを持たされた。

(こんな事してる。場合じゃないのに)


えりは、マコが湊に何か食べさせているのを見た。

湊は、基本、人当たりがいいから、拒否もしずらいんだろうけど、いつまでも戻ってこない事に、えりは苛立ちを覚えていた。

「ホントにさ、湊でいいわけ?」

佐奈もマコと湊の事を見ていた。

「うん。こういうのは嫌だけど」

えりは小さく笑った。

「あんまり言いたくないけどさ…」

「ちょっと佐奈!酔いすぎ…」

健が焦って言う。

「あ、知ってるから。大丈夫」

「え?」

「湊が付き合っては別れてを繰り返してたから…。あ、口に出すとイライラする…」

えりは笑った。

「それでもいいの?」

「良くはないけど、過去だしね」

「心、広いね…」

「広かないよ。今も、湊が女のコといるの嫌だし…」

「ねー、湊だめだったら、俺、立候補する!」

晶が言った。

「ダメ!俺〜!」

健も言う。

「どっちもやめときな」

佐奈がバシッと言った。


「じゃ!二次会行こー!」

誰かが、大声で言った。

「あ、じゃ、私帰るね」

「今日は、ホントに、ありがとう」

健が改めて言った。

「ううん。こちらこそ。健くん、いなかったらボッチだったし」

「私ら忘れてない?」

佐奈が笑って言った。

「アハハ。ごめん。佐奈ちゃんも晶くんもありがとう」

「うん。またおいでよ」

「どうかな」

三人は黙った。

「あ、湊と、別れようと思ってるとかでは、ないよ?」

「なんだ、良かった〜」

「でも、ああいう湊、見るのやっぱり嫌だしね」

「やっぱり、俺にしなよ〜」

「酔っ払いは黙ってなさい」

佐奈が突っ込んだ。

「アハハッ。ホント面白かった。ありがとう」

「やっぱりまたおいでよ…?」

健が優しく言った。

「うん…。ありがとう。じゃね」

「え、湊は?湊ー!えりちゃん帰るってー!!湊ー!!」

健は大声で呼んだ。

「あ!!待って!今行く!!」


湊が、戻ってきた。

「ごめん。えり…」

「二次会。行ってきなよ」

「行かないよ。帰ろう?」

湊は、えりの手を握って言った。

「じゃ、お疲れー。俺、帰るから!」

湊は、皆に声をかけた。

「湊いないと盛り上がんないしょ!」

「彼女さんも一緒に、行こうよ!」

「いや!帰るわ!」

「湊、行ってきなよ。私、1人で帰れる」

「危ないし」

「タクシーで帰るから大丈夫」

湊は、えりの手を離さなかった。

「さっきは、ごめん…」

「ん?」

「クッキー。口に押し付けられて…」

「あぁ」

「ごめん」

「もう、いいよ。じゃね」

「良くないでしょ。えり、嫌な…」


「湊ー!」

たくさんの友達に、湊は、腕を掴まれた。

「ねー、彼女さんも、二次会いきません?」

「ううん、私もう、帰らなきゃ」

「え?門限でもあるんですか?」

「ないけど。帰らなきゃ…」

えりは9歳年下の弟・孝司が家に1人でいる

ので、帰らなきゃいけない。

湊は、えりが心の隅に、他の子みたいに、遅くまで遊んでみたいという、思いを長年持っているのを知っているので、何て嫌な質問だと、本当に、イラッとした。

「えり、俺も帰るから」

「いい!1人で帰る」

えりは走って行ってしまった。

後ろから、健が追いかけて、声をかけていた。

湊は、追いかけるのをやめた。

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