学園祭(1)  湊の彼女、めちゃくちゃ可愛くない?

「湊の大学の学園祭って、もうすぐだよね?」

えりと湊はソファに座って、湊の入れた紅茶を飲んでいる。

「そうだね。…何?気になるの?」

湊はニヤッとした。

「うん。行ってみたい」

「来週の土曜日、一緒に行く?最終日、花火あがるし」

「へー!すごーい!!」

えりは、はしゃぐように言った。

「可愛いね」

「…バカにしてない?」

「……」

湊は無言でえりのティーカップをとって、テーブルに置いた。

「何で?」

「危ないから…」

湊は、えりにキスをした。

「カワイイ」

えりの耳元で囁いた。



当日、2人は、大学の最寄り駅で待ち合わせをした。

えりは駅についたので、湊を探す。

「えり!」

声のする方を見ると、湊と大学の友達らしき人が、5、6人いた。

えりは、緊張しながら、湊の方へ行った。

「彼女」

友達にえりを紹介する。

「こんにちは」

「へー。可愛いね」

「うん、じゃね」


「友達いたから、緊張した…」

「なんか、駅で会っちゃって、抜け出せなかった…」

2人、手を繋ぐ。

「さすが、人気があるね」

「うん」

「いいね。楽しそう」

「一見ね」

「うわ…」

「えりといると落ち着く」

「良かった」

「何見る?」

「たこ焼きとか」

「おばけ屋敷とかあるよ」

「入ったことない」

「そうなの?」

「湊ある?怖い?」

「俺は、春乃と入った事あるよ。でも、春乃の前だから、だいぶ気合入れて入った。怖いかは、わからん」

「あはは。入ってみる?」

「うん」


「あ、大学見えた。あそこ」

「へー。キレイ」

「校舎建て替えたばっかりみたいだよ」

「へー」

「ほら、出店も見えた」


「まずは、グルっと一周する?」

「うん。へー、こんな所に通ってるんだね」

「うん。今度えりの大学の方も行ってみたい」


「湊ー!」

「おう!お疲れ!

…同じ研究室のやつだ…」

湊はえりにコソッと言った。 

「お疲れー。あ、彼女さん?」

「うん」

「こんにちは」

「ども、こんにちは。かわいい彼女だね」

「ん。どうしたの?」

「うちのカフェ、すごい人きちゃって、てんてこ舞いなの。手伝い探してて。湊…は無理だよね…。あ!他のやつ見つけたら、声かけといてくれない?」

「ん、分かった。声かけとく」

「湊、行かなくていいの?」

「え…。だってえり…」

「私、ちょっとなら待ってる」

「えー!いいんですか?湊、彼女もそう言ってくれてるし…」

湊は、えりの顔を一瞬ジロッと睨んだ。

「は~、分かった。でも、ピークすぎたら、抜けるから」

「ありがとう!彼女さんもありがとう!」

「えり、どこで待ってる?」

「図書館とかないの?」

「あぁ、今日やってるかな…」

「うちのカフェ手伝う?」

湊がニヤッとして言った。

(嫌な質問を…。やるとも、嫌とも言いづらい…)

「嘘だよ。やっぱり手伝いにいくのやめる」

「えー…!」

「わかった…。私も手伝うから」

「そんな悪いですよ」

「食器洗いでもいいなら、やりますよ」

「えー。そんなー。…いいですか?」

「いいですよ」

「ありがとう!じゃ、急いで行こ!」


湊の研究室がやってるカフェの厨房的な所に来た。

「湊、きたぞー」

「神…」

「湊、ジュースとかお願い」

「…ジュースね。了解」

えりは、横目で料理を作ってる人を見た。

「湊が料理したほうが、早いんじゃない?」

ポロッと言ってしまった。

「え?!湊、料理得意なの?!」

湊は、えりを睨んだ。

えりは申し訳無さそうな顔をした。

「できるけど…。ジュースでいいよ」

「作ってよ〜。俺とマコとだけじゃ、手、回らなくて…」

「わかった…。何作ればいいの?」

「パンケーキか、クレープ」

「どっち?」

「え?何?どっちもいけんの?!」

「うん」

「神…」


「私は…、どうしたら…」

「健、洗い物は、そっち?」

「うん。すいません、彼女さんにそんな事させて…」

「え!湊の彼女なの?」

「へー、可愛いね」

「うるさいって。ほら、やろっ」

湊は笑いながら言った。

「…えり、ごめん…」

「自分から仕掛けたくせに…」

「ごめんなさい。つらくなったらすぐに言って」

「残念ながら、洗い物だけは得意なんだよね…」

「お互い、年季が違うからね」

湊とえりは、家庭の事情で、中学から、家事を大々的にやっていた。

「ね」


「湊、こっちお願い」

マコと呼ばれてる人が、湊を呼んだ。

「じゃね。えり。よろしく」

「はーい」


「すいません、彼女さん。よろしくお願いします」

「私、同い年だから。敬語やめません?」

「あ、そうなんだ。じゃ、遠慮なく。あ、俺、篠塚健」

「あ、谷川えりです」

「じゃ、えりちゃん。よろしく。俺、健君で」

「あははっ。じゃ、健くん」

「何かあったら言ってね」

「うん、ありがとう。頑張る」


健は、持ち場に戻った。

その途中に他の研究室のメンバーに、コソッと言った。

「湊の彼女、めちゃめちゃ可愛くない?」

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