同窓会 3

同窓会中、湊はもちろん、えりも楽しく過ごしていた。

えりは、自分では、友達はいないと思っていたが、クラスからは好印象だったらしい。

周りからたくさん話しかけてくれていた。

湊も、横目でその状態をみてホッとしていた。


「湊、彼女いるのー?」

湊が男友達数人と話していた所に、女子2人が輪に入ってきた。

「いる…。いない…?いや、いるわ」

「何それー」

皆笑った。

「微妙ってこと?」

「かな」

「どういうところが?」

「言わない」

「えー、気になる」

女子2人は、明らかに湊、狙いだった。

湊は、波風を立たせずにあしらいたかった。

「それより、周、結婚したんだって!!」

湊は大きめの声で、言った。

「え!そうなの?おめでとう!」

「子供2人」

周が発表すると、皆、驚きと歓声が沸き起こった。


「へー、すごい。子供2人かぁ」

「すごいねー。えりちゃんは?彼氏」

「いるよ。変なのが」

「変なの?」

皆クスクス笑った。

「顔は?」

「顔だけはいいかも」

「アハハ。なんか、えりちゃん、中学のイメージと違うね」

「そう?」

「すごい優しいイメージだったけど。彼氏には、厳しいんだ」

「そうだね…」(今日に関してだけいえば)

「みーちゃんは?」

「私はねー、…」

えりは、恋話が楽しくて、誘ってくれた湊に感謝した。

(見返りはなくていいか…)


パーティも中盤になった頃、突然、会場がざわざわしだした。

哲と、湊は、騒がしくなってる方へ行ってみた。

「どうしたの?」

哲が周りに聞いた。

「えりちゃん、具合悪くなったみたいで…」一人の女子が言った。

「え…?」 

それを聞いた湊は、慌ててえりの方にいった。


何人かがえりを取り囲む。

えりはしゃがみこんでいた。

「谷川?大丈夫?!」

湊は声をかけながら、円の中心に行き、えりに近づく。


「うーん…」

「谷川?」

湊はえりの肩に手をかける。

「…みなと…?」

えりは、湊の服を掴んで、湊の胸に寄りかかった。

周りが一気にザワザワっとした。


「谷川、大丈夫?どうしたの?」

湊はえりの体を軽く支えながら聞く。

「うーん…」

「…もしかして、お酒、飲んだ?」

えりは、お酒が全く飲めない。

「ん?…飲んでない…」


「ねぇ、谷川に飲ませたでしょ?お酒飲めないって言ってなかった?」

周りの女子たちに聞いた。

「すこしなら、飲めるかなって渡しちゃった…。ごめんなさい…」

「飲めない人は、一口も飲めないから…」「ごめんなさい…」

「ごめん、大丈夫」

女子がおちこんでたので、湊は急いでフォローした。


「湊。あっちにソファあるから、」

哲は湊に言った。

「俺と湊で運べば…」

「いや、女子が肩貸したほうかいいでしょ」「私、手伝う」

えりにお酒を飲ませてしまった女子が言う。


「いや、いい」

湊はそういうと、えりをヒョイッとお姫様抱っこをした。 

ますますイケメンになった湊と、美人になったえりの、二人の姿が、似合いすぎて、周りはホゥっとした。

(慣れてる感でたな…。ま、いっか…)

2人が歩く道を皆はあける。


湊は、ソファにそっとえりをおろす。

「大丈夫?」

「ん…」

えりはますます、湊に抱きつく。

(まったく…)

女子数名は羨ましいがっていた。


「えりちゃん、水…」

お酒を飲ませてしまった女子が持ってきた。「ありがとう」

湊は受け取った。

「さっきはごめん…」

「ううん」


「谷川、水…」

「いらない…」

「…、もう…しっかりしなよ…」(酔っ払い…)

湊は、えりに言う。

「ん…。なんでスーツ着てるの?」

「今、同窓会中だよ」

「あ、そうか…」

「バーカ」

「バカじゃない」

「酒なんて飲むなよ…」

「飲んでない」

「酔っ払ってんじゃん」

「ん…?」

周りは、湊の言葉が冷たいので、ギョッとしていた。


「湊…」

「何?」


えりの湊呼びにも、周りはびっくりした。

「そういえば、さっきも湊ってよんでたよね?」

「呼んでたね…」

「えりちゃん、湊の事好きだったんじゃ…。だから、酔ってつい…名前で呼んじゃったとか…」

まわりがヒソヒソ話出した。


湊はもう面倒くさくなってきた。

「谷川、しっかりして…。大丈夫?」

「湊、スーツ似合うね…」

えりがヘラっと笑って言った。

「そうだね」

「かっこいい」

「そうだね」

「自分で言うな」

「…ホントの事だから」

えりは笑った。


「湊。谷川大丈夫…?」

哲も訳が分からず聞く。

「あっ、うん。酔っ払ってるだけ」

「だけって…」

「ここで休んでたら、大丈夫だと思う」

「大丈夫かなぁ…。急に具合悪くなったり…」

「俺、付いてるから。大丈夫。皆、続きしてて」


「女子がついてたほうが良くない?」

「そうだよね。私だったら、恥ずかしいかも…」


「俺で大丈夫だから…」

「湊…」

えりがまた湊を呼ぶ。

「なに?」

と言った瞬間、えりは湊にキスをした。


周りから、声がもれた。


「もう、ダメだ。こりゃ…」

湊は、ためいきをついた。


湊は、周りを見て言った。

「俺の彼女…」

「ええー?!」

「ええー?」

「えー?!」

全員が、同じセリフだった。


「付き合ってること、皆に内緒で同窓会に行くって話だったのが…」

「何それー」

「やな感じ」

「えりも嫌がったんだけど…」

湊の、えり呼びにも、皆びっくりしていた。

「俺が、そうしたいって。言ったらこのザマだ…」

「なんで隠してたの?」

哲が聞く。

「性癖」

皆絶句した。

「あ…、やべ」

湊は、猫をかぶるのを忘れていた。


「あー、俺等帰るわ。ごめん。またね」

「わかった気をつけて…」

「うん、ありがと」


「えり。帰るよ」

「うん…」

「ほら、動けよ」

湊は笑いながら言う。

「やだ」

えりも、笑いながら言う。

「人前で、キスしちゃうよ」

「いいよ」

そう言うと、えりの方からキスをした。


「…わぁ」

「やば…」

周りから、冷やかしの声がでる。

湊は、周りが見ている事を知りながら、煽っていた。

「じゃ。いくよ」

「うん…」


「じゃ、皆、またね」

えりを抱っこして、湊はレストランを出た。

 

(これはこれで、良かったな)

湊はニヤッとしながら、家に帰った

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