プロポーズ

春乃と孝司が無事付き合うことになった。

湊は、長かった春乃の片思いが報われて心底ホッとしていた。

湊は、24歳になった今も、えりとつき合っている。


「春乃と孝司、ようやくまとまった…」

湊とえりは、カフェでランチをしながら、話している。

「ね、良かった」

「俺、大変だったわ。えり役に立たないから…」

「すいませんね」

えりは少しすねた。

「あ、このサラダうまっ」

「ホントだ。家でも作って」

「たまには、えり、作ってよ」

湊はニヤニヤしながら言った。

「何その、お前には作れないだろうけどって顔…」

「作れんの?」

「作れないけど」

「でも、これはここで食べるのがいいな」「そうだね。なんか落ち着く店だしね」


「ねぇ」

「ん?」

「孝司、大学生になったら、一緒に住まない?」

「うーん、そうだね…」

「嫌?」

「まずは、孝司が無事に高校生活終わるまで、しっかり見ておきたい。その後考える」

「…俺の事、シスコンって居うけど、えりもしっかりブラコンだね」

「うーん。孝司1回大怪我してからね。そうなっちゃった」

「骨折れただけだろ?」

「ま、そうなんだけどね…」

(本当は死にそうだったとは言えない) 


「…ま、いいけど」

「ごめん…」

「気長に待つよ」

「ありがとう」

「えらい?」

湊はたまに、子供の顔がでてくる。

「えらいね」

えりは、頬杖を付きながら、にっこり笑って言った。


「ねぇ、このあと、どうする?」

「散歩」

「おじいさんみたい」

えりは、笑った。

「おじいさんになっても、一緒に散歩しよ」

「え…」

「えりがおばぁちゃんになったとこも見たい」

「え…」

「じゃ、行こ」

「え?」

「…何?え、ばっかり」

湊はニヤッとして言った。


「ちゃんと聞きたい」

湊とえりは、手を繋いで公園を散歩している。

「春乃と孝司が大学生になったら」

「えー」

「えりから言ってくれてもいいんだけど」

「んー、時がきたら」

「ね?そうなるでしょ?」

「でも、さっきは言った様なものだった」「そう?」

「あれ?違ったっけ?」

「子供の名前はどうする?」

「やっぱり違くないよね?」


「俺はずっと好き」

「何、俺はって。私もずっと好きだよ」

「もしさ」

「ん?」

「パブロ君が、またえりに会いにきたら、えりはどうする?」

「また、そんな空想を…」

「マジで」

「湊を紹介する」

「もう、知ってるじゃん」

「彼氏だよって」

「彼氏だけど、別れることだってできるじゃん」

「面倒くさいなぁ」

えりは、笑った。

「湊が彼氏だって言ったら、パブロなら、喜んでくれるよ」

「あー、今の何かイヤ」

湊がニヤニヤしながら言った。

「面倒くさっ」

「ま、俺が離さないか。…どんな手を使っても…」

「腹黒い」

「そうだよ。知ってるでしょ?」

「うん。離さないで」

「うん。どんな手を使っても…」

「怖いわ」

「結婚しよ」

「…今?」

「うん。一生一緒にいて」

「うん」

「返事が軽い」

「プロポーズが軽いから…」

「ま、いっか。約束ね」

「また湊の子供っぽいの、出た」

「ちゃんと返事して」

「はい。約束します」


「じゃ、俺んち行こ」

「…軽いなぁ」


2人はクスクス笑いながら、ピッタリくっついて歩いた。

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