誰に反対されても好きでいて…

えりは、湊が家族に挨拶したいという事を、アメリカにいる兄・博之に伝えた。


「へー。湊君てしっかりしてるね〜。わかったよ。もうそろそろ有給取って、帰国しようと思ってたから。日にち調整するわ」

博之はビデオ通話越しに言った。

「ごめん。忙しいのに…」

「アハハ。何いってんの。大事な妹のためなら全然!それに、日本に帰る口実できて良かったしね〜」

博之は相変わらず、軽い。

「…お兄ちゃん」

「ん?」

「湊のこと、反対…する?」

「あははっ。しないよー。えりはちゃんと好きなんでしょ?」

「うん」

「湊君もえりを大事に思ってくれてるから、挨拶したいって言ってくれたんだろうし」

「うん」

「それに、反対されてもさ、頑張んなよ」

「そこが…ね」

「ん?孝司が、心配?」

「孝司もなんだけどね…」

「まさか、和美?」

「湊」

「え?」


「パブロコンプレックスが強くて。反対されたら、引いちゃうかも…」

「パブロコンプレックス?何それ〜」

パブロは、えりが6年付き合った元カレだ。

「中学からずっと友達で、私とパブロのこと最初から見てきた人だから、」

「あぁ。だから?」

「だから…。私が好きって言っても、信じないの。パブロよりは好きではないんでしょ?みたいな感じで」

「あぁ。それは、えりが頑張りなよ」

「え」

「俺らが、賛成しても、その根本はえりしか変えてあげられないじゃん」

「そうだけど、」

「俺がしてあげれるのは、応援だけだよ」「うん…」

「すんごい応援だけど。やかましいくらいの」

「ふふっ。うん」

「じゃ、日にち確定したら連絡するから〜」

「うん。ありがとう」



「ただいまー」

孝司が、友達の家から帰ってきた。

「おかえり!孝司、お兄ちゃん、来週日本に帰って来るって」

「来週!?ずいぶん急だな。あれ、俺予定どうだっけ…」

孝司はいそいそ予定を調べだした。

孝司にとって、博之は本当に大好きなお兄ちゃんなので、顔はウキウキしていた。


それと同じくらい孝司はパブロの事が大好きだった。

なので、えりは、湊との事をすんなり受け入れるとは思えなかった

湊とも、幼馴染の春乃の兄という事で、よく知ってはいるが、良い印象を持っているかは疑わしい。



「湊。お兄ちゃんね、来週帰って来るって」

2人は、湊の部屋で、ご飯を食べている。

「え?早いね」

「早すぎる?」

「いや、早いほうがいいけど」

「…」

「不安?」

湊は自分の作ったキッシュを、食べながら聞いた。

「…湊は?」

「俺?まぁ、孝司には嫌な顔されるだろうけど」

「うん」

「春乃の恋の邪魔にだけは、なりたくない…」

湊の妹の春乃は、えりの弟の孝司に片思い中だ。

「でた…」

「シスコン?」

「うわっ」

「嫌?」

「いや、キッシュ美味しっ」

(どっちのいや…?)


「ねぇ」

「ん?」

えりは、ソファに座って、湊の肩にもたれかかっている。

「反対されても好き…?」

「うん…。好き…」

湊はえりの頬にキスをする。

「…ホント?」

「…うん。6年の片思いをめんなよ」

湊はえりをにらむ。

「うわっ…」

「…ひくな、バカ」

「ひいてない。泣きそうなだけ」

「俺なんて6年間泣きそうだったんだから。我慢しなさい」

「ふふっ。はい」

「じゃ。しよ」

「何が、じゃ、なの?」

「ん?」

疑問を残したままだったが、湊はえりにキスをした。

「しよ」

「うん…」

えりは湊の首に手をまわした。

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