湊の欲望 「好きだ…」

湊は絵理をベットに押し倒して、そのまま、キスをした。

絵理は、抵抗して体をよじらせたが、湊が手首を強く掴んで、ベットにおしつけた。

「湊!やめて!」

「…」

湊は片手でえりの両腕を掴んで上に押し付け、もう片方の手で、えりの頬を掴みむりやりキスをする。

「いや…」

舌を入れたキスをどれくらいの時間したかわからない。

今まで我慢してきた分、激しくなった。

また両腕で、えりの手を押さえつけて、次は首筋にキスをした。

「やめて…」

キスマークを何個もつけた。

体全体をえりの体の上に乗せて、耳元でささやく。

「好きだ…。好きだ…。好きだ…」

えりは湊の気持ちにぜんぜん気付いていなかった。

「湊…、ごめん…」

湊は、体を離して絵理を見た。

湊の目は潤んでいた。

掴んでいた手も離した。

「ごめん」

湊は体をどけてベットの端に座った。

「…ごめん」

もう一度謝ると湊は部屋を出て行った。

カレーの焦げた匂いが、した。


それ以来、湊とは会っていなかった。

「えりー、さっき春乃から聞いたんだけど」

「ん?」

「湊君、行方不明らしい」

「え?!」

「一人暮らし始めたって連絡きたきりだって」

「どこに住んでるか分からないの?」

「うん。でもたまに電話くるから、無事なのは確からしい」

「えりは、湊君の居場所、知らないの?」「知らない…。ずっと会ってなかったから…」

「そうなんだ。春乃、お兄ちゃん子だから寂しがってて…。それで…。…。…」

孝司がまだ喋っているようだったが、えりの耳には、入ってこなかった。


それから、えりは外に用事がある時はキョロキョロ湊がいないか、探しながらあるくようになった。

湊の大学は知ってても、学部はわからない。

湊の大学は大きいから、キャンパスが散り散りにある。

そこから見つけるのは無理だった。


(湊、どこにいるの?)

えりは泣きそうになった。

気がつけば、毎日、湊の事を考えていた。

(どうして、湊もいなくなるの?)

(どうして、私が好きになった人は、遠くにいっちゃうの?湊までもう一生会えないの?)

もう、自分が湊を好きな事は自覚していた。

自覚した途端、絶望が襲ってきた。

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