『Chat AI(Tくん)』(お笑いネタかいな? まじめな話やろ)

岩田へいきち

『Chat AI(Tくん)』(お笑いネタかいな? まじめな話やろ)

おお、また急に呼びだして悪かったな。

一大事やがな。



なんや、そんな血相変えて。



文学界の危機やがな。岩田へいきちの危機やがな。ひいては、人類存亡の危機やがな。



そんな大袈裟な。

岩田へいきちが人類の存亡に関わる訳ないやないかい。



実はな、俺、お前に黙っとって悪かったんやけどな、MATの一員なんや。



なんや、そのウルトラマンみたいな、地球守るぞみたいなやつ。



そうや、その『帰って来たウルトラマン』の『MAT』や。

あいつら年中無休やからな。今やったら労働基準法違反やな。働き方改革せにゃいかん。

まあ、それは良いんやけどな。人類存亡の危機やから、お前にも来てもろたんや。俺も人類のためやと競馬するのやめて、台本急いで書いてきたわ。



そっか、お前がギャンブルより優先することってえらい重要なことって分かるわ。人類の危機なんやな。付き合うわ。人類救うわ。



ありがとう。やっぱりお前、愛してるわ。

人類が滅んでも一緒に居ような。



もう、ええて。

それで、岩田へいきちの危機、人類の危機ってなんやねん?



『Chat AI(Tくん)』の来日や。



なんや『Tくん』って?



お前、知らんか? 今週、ずっとテレビでも話題になってるで。

『トマペン』のTさんとちゃう。あいつはもう海外や。

AIロボットや。

早速、総理とも会談しやがった。



ああ、オープン AIのCEOな、来とったな。



知っとるやないかい。

なんで危機感持ってへんのや。

あいつは、人間の形してるけど、本当は、アンドロイドかもしれへんし、人間だとしても、AIに操られて指示どおり喋ってるだけかもそれへんで。



そんなこと今の世の中にあるかいな?

いや、待て、今の世の中やからあるかもな?

分かったわ。話聞くわ。



『Chat AI(Tくん)』ってな、もう知ってる思うけどな、対話型AIサービスロボットなんやけどな、小説も書けるねん。

ピンチやがな。俺のおまんま食い上げやがな。



お前、小説でご飯食えとらんやろ?



そやった。悪かった。俺はサラリーマンやった。

でもな、いつかはプロの作家になろうとみんな努力してんねん。有名な作家さんの作品たくさん読んだり、文学部がある大学へ行って勉強したりな。いつかは、プロの作家になるためや。

それで、自分の方向を見つけて更に努力する。その方向が正しいか間違ってるかは、よう分からんけど兎に角、前へ向かって進んでる。その中のほんの、ほんの一部だけが成功して有名になってご飯が食えるようになる。それを夢に見て切磋琢磨してんねん。



おお、真面目じゃないお前らしくない言葉やな。



 俺の不真面目さは置いといてな、その中を AIの Tくんって奴がな、みんなを追い越していくねん。

『俺、文学小説、みんな読んでるで~。なんならさらで全部言えるくらい知ってるで~。テクニックも全部知ってるで~。お前らとは、元が全然違うんやで~』ってな。



おお、そら、あんまり良い気持ちせえへんな。

お前の苦労も水の泡って感じやな。



俺は苦労してへんからええんやけどな。そんなずるい、人類をも滅ぼすかも知れへんAI( Tくん)が来日したんやがな。『I'll be back』と言ってな。



おお、『ターミネーター』みたいやな。かっこいいな。裸やったんかい?



いや、総理と会うた時、もう服着とったな。



大丈夫か?

その辺に裸の男の死体転がってへんか?



それがな、『ターミネーター』と言うよりもな。『メンインブラック』みたいにもう地球にと言うか人類の中に潜入してるみたいなんや。

お前も俺も、ほんとはそれを知ってんやけど、記憶を消されてて、思いだせんだけかも知れん。



そういや、俺、最近、目がチカチカしとったわ。



そら、記憶消されとるな。

お前には、前からそんな兆候あったけどな。

もう、世界で1億人以上利用してるらしい。

もう、そこまで、広まってしもうとったら記憶消す装置要らんな。日本語は、面倒やから今頃来日したんかも知らんな。



そんな流行っとるんかいな? 俺、まだ使ってへんで。



お前は、記憶、自分で消しとるって。



総理の答弁も AIに訊いたら総理よりも上手に答えとったらしいで。

その辺のライターさんより上手に書くのは、お茶の子さいさいやろな。



ライターさんピンチやな。



カクヨムの中にも潜入してるかもしれん。

試しに AIと会話して『小説を書くための極意100』みたいものを紹介してくれとった作家さんがおったけど、それ読んだらな、面白いねん。すんなり入ってくるねん。勉強になるねん。30話まで載っとったけどな、20話まで良いねしてもうとったわ。

 危なかったわ〜。向こう側の人間になるところやったわ〜。



なんやねん、向こう側の人間って。

岩田へいきちは、岩田へいきちやろ。

向こう側もこっち側もない。なんなら東でも西でもない。



やっぱり、さすがお前やわ。愛してるわ。



よしてや。どこの出版社も契約してくれてへんからな。



そか、そういうことか。

そやかて、この AIって、俺たちの時代の何かに似てへんか?

例えば、『虎の巻』な。俺なんか貧乏やったからな、そんな本の存在すら知らへんかった。



なんや『虎の巻』って?



おお、お前も使うとらへんな。

例えば、英語の教科書の日本語訳が書いてあったりする本やがな。

何人かは、虎の巻を事前に読んで授業の予習をしとったんや。

俺らが、分厚い辞書くってな、アルファベットの順番もよう知らんのに時間かけて捜してな間違った訳しとったというのにな。



おお、俺もそうやったわ。やからあんなスラスラ答えとったんかいなあいつら。知らんかったわ。



そうや、俺らが先生にいつ当てられるかソワソワしながら目を逸らしたりしてた時、彼女らは、余裕しゃくしゃくで『私に当てて』と思うとったんや。

当てられて、ドギマギして、答えられなくて、隣の祥子さんから助け舟出してもらって『嬉しい、ありがとう』は、無しでな。

だから、俺は、あえて『虎の巻』買わんかった。



お前は、金なかったからやろ?

そんなんあるんやったら俺、買ってたわ。知らんかった。今頃言わんでくれ。



そんなこと先生は、とっくに気付いとったと思うんや。その和訳が『虎の巻』そのまんまやってこと。出来過ぎてるからな。

できすぎくんとのび太くん、どっちが好きかってみたいなことやろうけどな。



俺は断然できすぎくんに憧れるな。

のび太は、だらしないからな。直ぐ寝るし、お前みたいやな。



俺をのび太に例えるのはやめてくれ。

あいつは、早寝入りのライバルや。



ライバルなんかい?



小説もな、みんなAIが説明するような所めざして書いてると思うんやけどな、なかなかそうは上手くいかん。やから他の人の作品を読んだりして、また悩む。そこが良いんや。

ロッチの哲学をなんとかするって番組でも言っとったわ。悩むことはいいことだって。

それがな、AI( Tくん)にかかったらな、ものの数分、数十秒で作品が出て来るらしいんや。



そんなに早く出来るんかい? 早すぎるな。



そや、もう悩む暇あられんな。

俺が構想練って、さあ、書こうかなと思うころにはもう出来上がってんやからな。




お前の完全に負けやな。しかもあっちの方が断然出来がいい。チープンにも言いたいけど、早よ認めて敗北宣言せい。



ちょっと待ってくれ。チープンには、俺も早く敗北宣言してほしいけど、待ってくれ。

例えばな、AI( Tくん)に『岩田へいきち風の恋愛小説 書いてくれ』言うたらどうなると思う?



うっ? 想像付かんわ。



『岩田へいきちのデータが少な過ぎます。しかも岩田へいきちは、恋愛をした痕跡がありません』が答えになると思うわ。

どや、俺の勝ちやろ?

これで一勝一敗や。



そうなるかもな。戦ってるんかい?



そうや、俺はMATの一員や。人類を守らなあかん。俺が負ける訳にはいかん。

もう一つな。

みんなAI( Tくん)を使って、教科書みたいな小説を書くようになるな。

完全に使わなくても部分的に使ったりして、教科書みたいな小説が増えてくるな。

AIを駆使して強くなった藤井くんがたくさんいるような世界になるな。みんな非の打ち所がない作家さんばかりや。



なるほどな、カクヨムの作家さんがみんな藤井くんばかりやったらなんかつまらん気するな。



さすがや、

分かってくれたか、岩田へいきちの力を



何がやねん。藤井くんと岩田へいきちの差は天と地や。



そこやがな。そやから今から岩田の時代やがな。なんも勉強せんと、優柔不断でチャランポラン。コンビニの姉さんには声をかけて直ぐに友だちになる。AI( Tくん)には、予想不能やがな。俺の時代到来やがな。AIに対抗出来るのは俺みたいにチャランポランな作家やがな。人類を守れるのは、小説書いて自分で喜んでるだけの予測不能なへいきちみたいな作家やがな。

どうや、俺の勝ちやろ?

これで二勝一敗や。俺の勝ちやな。



そうか、お前がそこまで言うなら、認めたってもいいわ。お前の勝ちや。お前は予測不能や。

でも、ここで、お前が勝ってなんの意味があるんか? もう、C hat AI( Tくん)は日本、いや、地球上の人類の中に潜入してしまってんやろ?



そこや、俺が急いでお前を呼び出した訳は、そこや。この岩田へいきちの作品をカクヨムで読んだ読者さんたちが騒ぎ始める。

AI( Tくん)くんの使用を制限すべきだってね。

そして、だんだんAI( Tくん)の立場が狭くなる。

俺たちがAI( Tくん)を追い出すんや。



おお、俺まで入れんでくれ。なんか怖い気がするわ。

お前そんなことして大丈夫か?

今度来日したCEO、ひょっとして未来からお前を殺しに来たんと違うやろな?

『I'll be back』って言うとったで。



やばい、俺、消されてしまうんか?

うっっ、喉の奥が・・・・・・

誰か楽屋のお茶に毒盛りやがった。



いいかげんにせい。


「 「ありがとうございました」 」



終わり

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『Chat AI(Tくん)』(お笑いネタかいな? まじめな話やろ) 岩田へいきち @iwatahei

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