第27話 見事な最期

 いつだったか、夏も終わりというのにまだ照りつけている太陽の下、ひとり公園を歩いていた。多分仕事の用で近道に通ったのだと思う。数メートル前方にセミが上からポトッと落ち、ひっくり返ってそのまま動かなくなっている。虫たちはこうして突然に死期がきて、潔く一生を終える。そのことに尊敬の念を抱いた。

 周りに同じように腹を見せて死んでいるセミが何匹かいる。よけながら歩く。時々、「ビッツ!」とひと鳴きして飛びあがるセミもいて、恐々歩を進める。

 先日も散歩中に私の方に向かってトンボが突っ込んできて、とっさによけたのだが、頬をかすめて、地面に落ちた。シオカラトンボだった。死期がきて、その日わずかに風が吹いており、風に乗って飛んでいたのだろう。

 以前セミが地面に転がっていたのだが、何かに食べられたのか、胴体の下半分がなかった。驚いたことにその断面は空洞であった。私は、こんな身の詰まっていないセミも鳥等に捕食されるのか?と疑問を持ったが、調べると捕食されるらしい。そして、中が空洞のセミはオスであり、だからこそ鳴き声が響くのだ。ということは、メスは鳴かないということであり、メスのお腹は詰まっている、ということである。あーなんて虫の生態はユニークで面白いんだろう!!


 

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