第17話 だって・・・

 子供が小さい頃、家族で昆虫博物館へ行ったことがある。温室には熱帯植物が植えられ、青色のチョウやアゲハ蝶のようなのが、ヒラヒラ飛んでいる。極楽とはこういうところかと、思いめぐらす。

 子供たちは指にとまれとばかりに、人差し指をチョウに向かって、突き出している。すると私の頭にチョウがとまる。

 チョウが頭や肩にとまると嬉しく思うのは、私だけではないと思う。「チョウに選ばれた私っていい人」的優越感がどうしても、心にわいてくるのだ。

 子供たちは「お母さんいいなー」と、うらやましがり、そのうちに子供たちの頭にもチョウはとまっていた。

 次に標本室へ。世界各国の珍しいチョウの標本が並べられている。色鮮やかで、飛んでいるのを生で見たら、きっと感動するに違いない。

 チョウの標本の奥には、ガの標本が、これまた沢山展示されている。学芸員の男性がさりげなく近くで控えてくれていて、つい、「ガってね~」と、その方に向かって言ってしまった。すぐさまその方は、「いえ、ガも美しいですよ」といわれた。

 陳列されたガをみた。ほとんどが茶色で胴体は太く、羽の粉が今にもバサバサ飛んできそうな感じ。何度眺めてみても、ガである。美しいと思えない私。、だって、ガだもん。。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る