第11話 蛍

 私が子供だった頃、家族で近くの河原へ蛍を見に行ったことがある。ぽわーんと明るい光を放ちながら、無数の蛍が飛んでいて、それはそれは幻想的だった。

 当時はたくさんいたので一匹だけ虫かごに入れて持ち帰り、一晩枕もとでほのかな明かりを楽しみ、眠りについた。

 翌朝その蛍を見て、昨夜の美しい姿とうって変わって、かなり地味なので少しがっかりしている自分がいた。

 それは男が薄暗い洒落たバーで、いかした女と意気投合し、一夜を共にし、明け方に傍らの女の寝顔を見、ちょっと落胆するのと似ている。

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