第6話 泡沫フクロウカフェの転身
「文房具フクロウカフェ?」
「そうです。文房具を売るフクロウカフェです」
「なるほど、確かにやりたいことと出来ることが両立しているような気がしますがそんなに単純に成功するものなんですか?」
「まあ十中八九無理でしょうね」
「え?」
「考えてみたんですが、そもそも大成功する必要はなくて、細々とでも続いていけばいいなって」
「それで二つを合わせてみたんですか?」
「二つじゃなくて四つです」
「四つ?」
「まずはこれを作りました」
普段は動画を見るかゲームをするか、ツイッターを開くことしかないスマホ君。そして今もまたツイッターのプロフィール画面を開いている。
「これは、このお店のアカウントですか?」
「そう。あとインスタにも作りました」
「なるほど。確かに現代のマーケティングにSNSは欠かせないですね。手軽に始められますし」
「そう。そして最後の一つはこれです」
「これはブッコロー、と私?」
「そう。動物と可愛い女の子がいるというだけで広告効果が望める(個人調べ)」
「かわ、いい」
「まあその点については坂城さんには写真を使用する了承だけ貰えれば運用上は問題ないんですが、どうでしょう」
「それは、もちろん構いません。もしお力になれるなら」
「では目いっぱいお借りします」
これで準備は整った。
あとは、僅かなセルフリフォームという名の模様替えを行えば良かったのだ。
「あの、すいません」
「はい。ん?え、誰その子」
「あの、実は…」
申し訳なさそうに俯く彼女の腕には、いよいよ何がなんだか分からない鳥然とした生命体が抱えられていた。白い顔、茶色い体、黄色い脚。っていうか着ぐるみ着てないか、こいつ。
そして彼女の主張はこうだった。俺が新たなアイデアを考えている最中、自身もなにかアイデアの基になるようなものはないかと街中を捜し歩いていたらしい。その結果見つけたのがこの謎の生命体であったという。そこで関係各所に連絡し、流れ着いたのがこの店だったというのだ。
「この鳥のようなトリはなんていう種類なんですか?」
「分かりません。私もトリちゃんと呼んでいます」
ふむ。うちの店で引き取ること自体は何やら大人たちによってすでに決まっているようなので問題はないだろう。するとこのフクロウカフェに所属している鳥スタッフはフクロウ(ミミズク)のブッコローにフクロウ(なぞの生物)のトリということになる。なんと純然なフクロウが一羽たりともいないではないか。ミミズクのブッコローを0.5カウントしても、1:3でそれ以外の要素の方が多い。
「うーん。まあバードカフェってことにすればいっか」
トリは鳥なのかすらも良くわからないがこちらも0.5は鳥ということにしておこう。3:1でバードの勝利である。
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