第6話
「ここがガリレア…か」
「貿易の街とは聞いてたが…やけに人が多いな」
「お祭りとかやってたりして」
「ヤクザは好きだよな祭りごと…」
「えぇ…それは関係ないよぉ…そもそもに私はテキ屋系じゃあ無いし…」
「テキ屋系って何なんだよ」
「まあ、ヤクザにも色々あるの!」
等と話しながら歩いていると、数メートル先で、小太りな男が野盗らしき集団に絡まれていた。
「んだてめぇこれっぽっちしか持ってねぇのか?」
「身ぐるみ剥いでやろうぜ」
「こんなこぎたねぇおっさんの身ぐるみ剥いでも一銭にもならねぇだろ」
等と男たちは笑っていた。
「ねえお兄さん何やってんの?」
音もなく現れた人影に男たちはざわつく。
「なにしてんの?」
声の主は花形だ。彼女は初速が早い何か考えが有るのか、思いついたら、直ぐに動いている。
彼女の動きはトリッキー過ぎて、元軍曹の俺でも全く読めない。
「何って…あれだよ…俺達このっオッサンと取引してたんだけどよ…金だけ持ってすっぽかしやがったから焼入れてやってんのよ」
それを聞いて花形は何やら思うところがあったらしい。
「金だけ持って…ねぇ何を取引してたの?」
男達は一斉に黙る。
「何を取引してたの?」
「薬です…人魚の血を使った…でも…人魚は法に触れる!俺は怖くなって…」
花形は容赦なくオッサンの顔面を殴り潰す。
「テメェには聞いてねぇよ…で?何の取引してたの?お兄さん?」
こういう時花形は異常な圧を周りにかける
誰一人動ける者はいなく、
全員が口を噤む。
「おいオッサン…その人魚の薬は本当に有るのか」と俺が問う。
「有りません…でもアテはあります」オッサンは息も絶え絶えに答える。
「なあ?兄ちゃんその薬の効果を教えてくれや?」
ガコンという鈍い音と共に俺の頭から温かいものが滴る。
角材か何かで殴られたか?
一瞬の出来事だった、目の前にいた男達十数名いただろう男たちがひとりを除いて地面に倒れていた。
「いいよ花形が…これぐらい大したことない」
「でも…痛いでしょ?」
花形の表情が少し柔らかくなる。
「分かるだろう…痛いのは慣れっこだ…それよりもやりすぎんなよ…悪目立ちするぞ」
などと話していた矢先、オッサンがこっそりと逃げ出そうとしていた。俺は足元に転がっている、血のべっとりと付いた角材を拾い上げ、オッサンの進路にぶん投げる、角材は、オッサンの方をかすり抜け民家の木製扉に突き刺さる。
「心配すんな元気いっぱいだぜ」
オッサンは腰を抜かしたのか、その場にへたりこんだ。
「おいオッサン…と、そこのガキ逃げれると思うなよ…その人魚の話し俺達に聞かせてくれや?」
二人とも目に見えて怯えていた。まるで寒天の妖精でも乗り移ったかのように。ブルルと震えていた。
「こっちです!!憲兵さん!コイツラです港で暴れてる奴らは!!」と甲高い声の男が俺達を指差し言い放つ。
「まずいな…花形、お前は手を出すな」
俺は、オッサンと少年をかついで、走り出す。
俺には長年の兵歴から、不思議な感ある。
そうだ…多分あそこだ。
街にある一つの小さな汚水升に目をつける、
先程ぶん投げた角材を拾い上げ、少年を花形に預ける。そして俺は少し離れた場所に有る、升に目掛けて走り出す。案の定、俺の後ろで、声の高い青年と、
憲兵の老兵が倒れ伏していた。
(全く…)
構わず、俺は汚水升の通気穴に角材を、ぶち込み、テコの原理で升をこじ開ける。
やっぱりな。そこは汚水升なんかではない。
まるで軍人のアジトみたいだ。
「花形…そのガキを連れてこの穴の中へ」
「うん…どうするの?その二人?」
「まあ、尋問かな。」
それを聞いて、花形はまた妖艶で悪意を孕んだ笑みを浮かべる。
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