第4話
ふとした瞬間、俺は花形の裸を見た。
それは、風呂に入っている…というよりも水浴びでもしていた時だろう。
彼女の背中には、昇り龍の入れ墨に、胸部に数十の刺し傷のような跡があった。
花形は元より、恥ずかしいというよりも概念が薄いらしく、
別に裸を見られたことよりも、(どう?信じてくれた?)これは、位前より、俺が、本当にヤクザ者だったのか?と問い続けて来たことによるものだろう。
不敵に笑う彼女を前に、その事実は確信に足るものだった。
少し酷いとも思ったのだ、なぜ可?って?彼女は女の子なのに、左胸が形を失っていたからだ。それは、彼女が基た世界で刺されて殺されてたことを如実に物語るものだ。
俺が口出しすることではないのだが…生前相当恨みでも買っていたのだろう。
「驚いた?ね?嘘じゃあなかったでしょ?」
彼女は屈託なく笑う。
まあ、昔の話だ。それをいえば、俺もアンガウルで負った傷跡は未だに消えてはいない。
「一緒に水浴びでもしてく?」
「やめとくよ…お前は良いかもしれんが…俺は恥ずかしいんや」
それは俺自身が傷跡を見られたくないってのも有る。
俺の場合は、全身裂傷、銃跡複数、全身火傷痕、とてもではないが人様には見せれたもんではない。
「私相手でも恥しいの?」と彼女はニヤニヤ笑う。
「水は明日明後日には掃けるらしい…そしたらキャラバンで街を出ようと思うが…」
「やっぱり行くの?何だっけ?」
「エルダの街…だろ…【生命の泉】元いた世界に戻るかどうかは置いといても、行くだけ行ってみよう…何もしてないのは退屈だろ」
「そうねぇー確かに一理あるかも」と、彼女は濡れた髪をかきあげながら答える。
エルダの街…酒屋のオッサンが言ってた事が確かなら、情報を集めるなら、まずは底に行く必要が有りそうだ…
あと何か言ってたな…空に浮く女神様とか、人魚?とか
以前はセイレーンとかいう海の魔物の話も聞いたが、どうにも胡散臭い。
「ハイハイ、いつまで女子の入浴覗いてんの…消えた!消えた!!」
「覗いてはいないけど…まあ、一応消えとくわ」
危ない危ない…あんなの相手に変態疑惑でもかけられたらたまったもんではない。
花形は、髪も短いし背も低い、背中には和彫りが入ってるし…でも可愛らしい見た目をしてるのが質が悪い。
それでいて、腕っぷしも立つし、頭もキレる…
ヤクザってのはそういうものなのかね。
妙な夢を見た。
天高く渦巻く雲を突き破り大きな龍のような生き物が出てきた
ただ、それを見るだけの夢…俺にはそれが何かの予兆のように感じた。
「水…捌けたね」
「こうも綺麗に捌けるものなんだな…変な作りの建物ばかりだと思っていたが…これを想定して造られていたんだな…」
「福田!キャラバンは明日の夜出発だったよね?」
花形はニヤニヤ笑う
「ん?そうだけど…」
「よし!旅のはじまりに景気づけだ…町の酒場巡りしようぜ」
そう笑う彼女は妖艶な雰囲気と、底知れない不気味さを孕んでいる。
「分かったよ‥今日はとことん飲もうぜ‥」
「変な珍味と変な酒いっぱい用意しようぜ!」
これから始まる旅は恐らく楽な旅路ではないだろう。
今日くらいはコイツと楽しく飲み明かすのも悪くはないかもな。
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