第3話
圧巻だな…確かにこれは凄い
街は水の中に沈んでいる。先日まで酒を飲んでいたあの酒場も、ギルド共が集まる集会所も…何もかもが水の中で、まるで大きな湖を眺めているような感覚になる。
そうだ…例えるならダムに沈んだ村みたいだな…
「ダムみたいだねー」と花形が俺の心を読んだように言う。
「また…何だそれ」おれは、花形が持ってる謎の肉と酒を指差し聞いてみる。
「これ?森の中で獲った肉とココアの中にブランデーを注いだお酒なんだって…飲む?美味しいよ」
「確かに美味そうだな一口貰っても良いか?」
はいよと、花形は肉の燻製と酒を俺に手渡す。
「なあ…花形…お前は本当に侠客なんてやってたのか?」
これは何度めかの質問だ…
「うん?しつこいね…やってたよ…私こう見えて若頭やってたんだから…」
「若頭ってお前女の子だろう?出来たのか女でも」
「どの世界も飛び込めば何とかなるもんだよね…福田もそうじゃなかったの?」と彼女は妖艶な笑みを浮かべる。
確かにそうだったかもな…アンガウルの決戦のとき、右も左も分からない…正直敵の数もはっきりとは認識していなかったからな…でも
「俺は傭兵やってて怖かったけどな…お前は違かったのか?」
「勿論怖かったよ…もちろんね」
時間はもう夜更けだ…前いた世界で見るよりも遥かに大きな月が俺達を、見下ろす。
月の光に反射して、花形の顔が見える。その顔は少し悲しそうだった。
俺達は生命の泉を探している。生命の泉は、人を生き返らせ、
不老不死の力を与える。そして、人の願いを一つ叶えるらしいのだ、俺達は元いた世界に戻りたい…花形はどう思ってるかは分からないが、俺は戻ってまだやることが有るからな。
何より、戦争の勝敗をこの目で確かめないと、俺の中の戦争は終わらないのだから…
「ふーくだ…福田!」
ハッとした、考え事をしてたからか、花形の声がき超えてなかった。
「酒…追加しよ!!今日は飲もうよ!!福田湿っぽいぞ」
彼女に言われてまたもやハッとさせられた。
「待っててよ…酒ならいっぱいあるからさ…取ってくるね」
まるで超能力者だな…いや、俺がわかり易いだけかな
大きな月に見下されながら飲むココアのなんとかって酒はひどく甘くて美味しかった。
世界は暗闇に満たされているようでそうではない。
少なくとも、この、大きな月の下、まるで世界を包み込むように、月明かりを湖が反射して俺達を、照らす。
「ね?こんなに奇麗な景色の中で落ち込むとか…逆に難しいって」と、彼女はニコニコと笑う。
確かにそうだな…と思い、つまみの肉を手に取る。
同時に口の中に妙な刺激が走る。
「花形…この肉って何だ?」
「さあ?首が8つあるトカゲ?みたいなの」
「それって食えるのか?」
「ん?…さあ?でも私も食べてるよ…いいよねこのエッジの効いてない感じ…」
まあ…俺もサバイバルは長いが…うまいのか…これ…
「ハイハイ…辛気臭い顔しなーい…笑おう…ね?」
と、彼女はまたも笑う。今この世界は、俺と花形だけの様に感じる…どこまでも美しい世界が広がっていて、まるでそれを貸し切っているようだ…まあ、悪くはないかもな。
彼女は始まりの街、ガゼットの街で仕入れたお酒を俺の前に置く。
そこには俺達の姿を写す水面と、やけに大きな月に…水面に反射する月明かり…どこまでもそんな景色が広がっているように感じた。
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