第2話

ここは、中海から砂漠を挟んだ片田舎の小さな街。

俺達は、ここの酒場が気に入って、かれこれ一週間は入り浸っている。


俺達は情報集めをしていた。



然し、気付けば情報集めは、酒飲み勝負へと変わる。


俺の名前は福田。元軍人で、福田というのも、傭兵時代に名乗っていた偽名だ。


そして、もう一人、短髪でクリットした目が特徴的な少女…こいつは、花形という。



花形は元侠客…つまり“ヤクザ”だ。

ブカブカの服に隠れて見えづらいが、

服の中は、とんでもない入れ墨が入っている。


顔に似合わず、酒や珍味を好み、珍しい酒や、変な食べ物をよく探している。


だからだろう、この店がミリョクテキだったのは。


この店は、街の物流だ。

ある程度の物なら手に入るが、店で出る食事には中々酷評だ。



まあ、蜥蜴のスープや、蜘蛛の天ぷらなど、相当な物好きでも無いと好んで食べはしないだろう。




「やぁー此れなんだっけ?八目蜘蛛?美味いなぁ」



「ああ、ハチ目蜘蛛は見た目は悪いが、味はピカイチよ‥嬉しいねぇ‥嬢チャン若えのに‥こいつの良さが分かってくれるか?」



「へへ見た目なんて味には劣る‥でもおっちゃん‥私おっちゃんが思ってるほど若くもないよ?」




「またまた‥成人してんのかも怪しいぜ?」




などと軽口を叩いている。


「まあ、こいつの年齢なんてどうでもいい‥なあおっさん‥人魚伝説は知ってるか?」

俺は、二人の間に割って入る。



「人魚?‥まあ聞いたことはあるが‥ここよりも、北に位置するエルダって街に伝わる伝説の一つだな‥あそこは凄いぞ‥生命の泉に人魚‥空に浮く女神‥なんでもござれだ」



やっぱりか‥やっぱり人魚と生命の泉はセットなんだな‥それに



「やっぱり、エルダの街かぁ」

と、花形がつぶやく。



「やっぱり生命の泉なんて諦めて、八目蜘蛛狩って暮そうよ…」



「お前なぁ…」




「そりゃあいけねぇ!嬢ちゃん…八目蜘蛛は見た目もグロイが…とてもじゃあないが一般人に狩れるようなもんじゃあねえよ…」




「危ないの?」花形はにやりと笑う。



「危ないなんてもんじゃあねえよ…体長はデカイので三メートルはある…基本的にはツガイだが…時折群れを為してる…鉢合わせただけで命は無いぞ」




「へぇー…確かに強いかもな」



「止めとけよ」と一応は制しておく。



花形は強い。現役時代“不死身の軍隊長”とか呼ばれてた俺でさえ、サシで喧嘩したくない程に彼女は強い。


一般的なヤクザの強さなんて知らないが、この子は普通ではない。



「お前が暴れたら、この街に居づらくなるだろ」と彼女に小声で話しかける。




「ふん。体長三メートルの蜘蛛はなんて勝てるわけないじゃん」




よく言うぜ。







それにしてもよく雨が降るな…


「おっさん‥今は梅雨か何かか?いつまで雨降るんだよ」




「は?つゆ?何だそれ‥今は雨期だな‥兄ちゃんら何処から来た?南方か?あそこらは雨期が無いものな…まあ見てな…もう少ししたら、街の高台の方に避難するぞ…最高の景色が見れるぞ」



今度はおっさんがにやりとする。何かキモいと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る