第4話

 できることなら、家から出たくない。これもわたしがテレワークを推したい理由の一つである。


 休みの日は基本的に家にいる。ただでさえ前日まで仕事で疲れているのに、わざわざ仕事の無い日まで外に出ないといけないのか。

 テレビなんかでは、特に大型連休の時期に休日を外で過ごし人の場面が映されることが多い。そして同時に高速道路の渋滞情報が流れる。その時の画面には、列をなす自動車が何十台何百台と映し出されるのだ。

 もしそれが映った時は、必ずテレビを消す。そんなものを見たら、わたしは当事者でもないのにめまいを感じるからだ。なぜみんな好き好んでそんなきつい思いをしてレジャーに出かけたがるのだろう。家こそ至高、家こそ正義!


 一人暮らしを始めてから、特に外出の頻度は下がったと言ってもいい。必要な買い物は平日に済ませているし、休日前には、外出しなくても済むように普段より多めに必要分を買い込むことにしている。

 休日で出かけたことがあるのは、どうしてもわたし自身の判断で日程を変えられない時――たとえば身内や関係者の結婚式や葬儀なんかの時はどうしようもない。あとは美容院。これもさすがに切らないわけにはいかないので泣く泣く。夜だと閉まってる可能性もあるから。


 こんな生活の助けになってるのは、ひとえにネット通販の発達のおかげだろう。クリック一つで数日中には自宅に届く。運送屋さんに感謝しなければならない。

 本とかDVDとか、届いたものを休みの日に消化している。作品に没入できる、わたしだけの時間。この誰にも邪魔されない時間も、リモート飲み会と同じくらいのストレス発散なのである。

 特に何もない時は、ネットで動画を漁る。自分はゲームをそれほどやらないが、プレイ動画を見ることで、最近の人気ゲームを知ることができた。興味を持ったものは買ってはみている。もちろんネットで。でも他にも見たい動画もあったり、それこそ消化しきれてないDVDや本がたくさんあって手をつけられない。


 ああ、時間が欲しい。仕事が無ければお金が無くなる。でも仕事をしているせいで時間は取られる。

 和泉よ、わたしに時間をくれ。そのためにはお前がテレワークを認めてくれるのが一番なんだ。

 毎朝電車に乗って職場に向かい、仕事が終われば電車で自宅に帰る。この時間がもうもったいない。その時間で映画一本は余裕で見れる。

 もしずっと家にいなさいと言われれば、わたしは喜んでそれを享受するだろう。外出なんて、食料の調達とか病気の治療とか、本当に生活に必要なことくらいでいい。

 いや、いっそそういうことも自宅でできれば楽なんだけど。

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