4、見たい気持ち2割


 深い雪が降った日もあったが、だんだんと寒さは緩んできた。

 にもかかわらず蛾の卵は、同じ場所にあり続けた。


 変化があった。


 わずかだが、枯れ葉だった卵が膨らんできたのだ。

 私は、それに気づいてしまい背筋がザワザワした。

 本能的に、まずいと感じたからだ。


 春はもうすぐおとずれる。そうすれば、これは孵化するだろう。

 そこには、何があらわれるのか?


 怖い。どう考えても怖い。


 でも、もう4カ月も見守ってしまった。


(……見たい)


 そう、何が出て来るのか見てみたい気もした。

 自分にそんなグロテスクな願望があるのかと、空恐ろしい気持ちにもなったが費やした時間の結果を求めるのは、人間ならではの欲望なのかもしれない。


 私は怖い気持ち8割、見たい気持ち2割くらいを抱えたまま春を迎えた。

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