それからのこと。

第22話


 それから、私はロバート様について治療院を回る日々を過ごした。回復魔法を使える者は殆どおらず、しかも平民のための治療院を建て、治療に回るような者は、この国ではロバート様しかいないらしい。そのため、少しずつしか治療できなかったようだが、私が回復魔法をマスターしたことで、治療できる人数が増えた、とロバート様にも、治療院のスタッフの方にもたくさん褒めてもらっている。



 私自身も、患者さんに喜んでもらえる、この仕事にやりがいを感じるようになった。ジルとテトは、変わらず私に同行してくれている。ジルの魔術騎士の仕事が、滞っているのではないかと心配だったのだけれど、ジルは「問題ない」としか言わず落ち着かなかった。それをロバート様に相談すると「君たちは、お互いのことばっかりだね。」と声を上げて笑った後、教えてくれた。




「ジルはね、元々仕事しすぎだったんだ。だから、この機会に仕事を減らして他の若手に割り振ったの。それに、サチを護衛することも立派な仕事だからね。」



「それにね、テトもかなり力を付けてきたからね。まぁ、年齢や経験の関係で魔術騎士の試験はまだ受けられないんだけど、ジルの補佐ということで見習いとして雇えるように今、手続き中だよ。」



 今日同行してくれているテトが、得意げに胸を張った。





 ……何だか私がこの世界に来てしまったせいで、ジルもテトも、そしてロバート様にも、仕事を増やして迷惑を掛けてしまっている。そんな思いが表情に出たのだろう。かぷり、とロバート様に首根っこを噛まれてしまった。



「いっ!痛いです!」




「あー!ロバートさま、ジルにおこられるよ!」



 ジルには言わないでね、と笑った後、ロバート様は言葉を続けた。




「自分のせいで……とか考えていたんだろう?」




「う……。」




「サチのおかげで、命が助かった者がたくさんいる。これは、俺だけでなく、ジルもテトも望んでいることだ。ジルとテトはその手伝いをしたいからしているだけだ。」




「うんうん!それにサチのおかげで、ぼくつよくなれたんだよ。もちろん、そうじゃなくてもたすけるけどね!」



 ぼくたちはかぞくだから!と嬉しそうに話すテトを、私はぎゅうぎゅうに抱きしめた。「俺だけじゃなく、テトも怒られるぞ~」と揶揄うロバート様の言葉すら心地よかった。

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