第12話





 ジルによる魔力レッスンが始まって、一週間が経った。テトは、今までより集中しレッスンを受けているので、かなり上達しているらしい。今日は、家の100m圏内の土地に、悪意を持った人間が入らないよう、結界をかけて回っているらしい。





 一方、私は…



「う……はぁ、やっぱり上がらない」



 小石を魔力で浮かせる練習を始めて一週間。全く上がらない。上がる気配がない。




「焦るな。大丈夫、もう一度だ」




 ジルは私に掛かりっきりで教えてくれている。ジルによると、例えば〈風が吹くように〉と念じたら、おそらく私は出来るらしい。ただ「確実に、ここら一帯が吹き飛ぶがな」ということで、まずは魔力のコントロールを学んでいる。





「ほら、手を貸して」




 ジルと手を重ねる。温かいものが、全身を駆け巡る。これが魔力らしい。この感覚を掴むよう言われている。ジルと一緒に手を小石に向けると、ふわふわと小石が浮かぶ。 





「あ、あれ」



 小石だけでなく、私の視界もふわふわし始め、ぐらぐらする。倒れる、と思った時、ジルがパシッと抱えてくれた。




「サチ、魔力酔いだな。今日は終わりだ」




 まだ、お昼にもなっていない。少し休んだら再開しよう、そう言おうとするが、ジルに抱き抱えられ、ベッドに寝かされる。




「気づいてやれず、すまない。サチが焦るのも分かる。だけど、無理はさせたくないんだ。魔力酔いが起きたということは、サチにかなり疲労が溜まっているということ。そんな時に練習したら、魔力暴走するかもしれない」




 ゲーム画面で魔力暴走が起きたシーンを思いだし、鳥肌が立つ。もしそんなことが起きたら、家ごと無くなってしまう。この大事な場所が。




「それはいや」


「ああ、だから今日は休みだ」



 ジルは優しく私の頭を撫でた。そして、悩んだ表情を見せる。




「ジル、どうしたの?」




「サチ…本当は王宮や神殿で、サチを保護してもらった方が良いかもしれない、と少し迷う気持ちがあるんだ」



「そんな…!いや!」



 慌てて飛び起きると、ジルは私を優しく抱き締める。





「サチの安全を考えたら、そうした方がいい。そんなこと分かりきっているんだ…だけど、もう、俺が、手放せないんだ。ごめんな」



 ジルの顔を覗き込むと、泣きそうな顔なのに、笑っていた。どうして、ジルが、そんなに悲しそうな顔をするんだろう。


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